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京橋 婆娑羅(京橋)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年7月7日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月25日

東京都中央区京橋3-1-1 東京スクエアガーデン1F    

☎︎03-5542-1938

営業時間11:00~14:00LO(土、祝11:30 ~)、17:30~22:00LO(土、祝~21:00LO) 

定休日:日曜 予算:昼¥1,296〜、夜¥5,040〜 

http://aoyagi-group.jp/r/detail.php?rid=0004

*2016年「週刊新潮」32号掲載



日本料理の匠の家庭料理から生まれた

「トマトすきやき」


 食欲減退気味の真夏にこそ味わいたい「トマトすきやき」は、徳島の日本料理店「青柳」の3代目・小山裕久氏(67)のオリジナル料理。現在は「青柳」の姉妹店である「婆娑羅(ばさら)」各店の名物となっているが、もともとは三世代交流を目指して考えられた、小山家の家庭料理だったと言う。

「すきやきは、お肉が贅沢だった時代にはハレの日の家庭料理でしたが、今はお肉をいつでも食べられるようになり、ご馳走から遠ざかっていました。そこですきやきに必要な要素を考え直すと、酸味が足りないことに気付いたので、トマトを加えたのです。お年寄りが昔懐かしく感じる割下の味を残しながらも、現代的な新しさを打ち出し、若い人がイタリア料理感覚で楽しめる味を目指しました」

 これを目当てに、地下鉄京橋駅に直結したビル1階の「京橋 婆娑羅」を訪れると、既にあちこちのテーブルで「トマトすきやき」が作られている。支配人の三島知法氏(42)いわく、

「夏でも半数以上のお客様からご注文をいただきます」

 とのこと。前菜から甘味まで全4品6696円の「トマトすきやき会席」は、プラス1080円で前菜を名物「文箱八寸」にグレードアップできるのも好評だそうで、早速これを注文すると美しい前菜15品が登場した。鳴門鯛の昆布締めやカラスミ大根などと共にお酒を楽しみ、いよいよ「トマトすきやき」だ。

 三島氏がテーブルに鍋を運び、薄くオリーブオイルを引いてニンニクを炒めたら、続いてトマト、タマネギを炒め、バジルと割下を加えて大判の霜降り和牛の切身をのせる。器に取り分けられたトマトを味わえば、まろやかな酸味に食欲が刺激され、柔らかな和牛の旨味に頬が弛む。

「お肉はA4クラスの黒毛和牛で、1人前3枚・150㌘を、注文が入ってからお切りします。予め切っておくと表面の脂が室温で溶けてしまいますのでね。このお肉を落とし蓋のようにのせることで、野菜にお肉の旨みが染みるのです」

 なるほど、肉の旨味と煮汁が染みたタマネギは素材本来の甘味も生きて、ますます箸が進む。トマトは加熱するとアミノ酸が増すため、鰹節のように煮汁の旨味を増す働きもしているとか。この煮汁で豆腐も味わってみたい気がするが、

「豆腐からにがりが出るとせっかくのお肉が硬くなってしまうのです」(小山氏)

 具材に付けるのが溶き卵ではなく、超半熟の「蒸し玉子」なのも、理由がある。

「軽く温めた方が、白身が絡みやすいんです。生卵が苦手な外国人客にも喜ばれているんですよ」

 鍋に残った煮汁に赤ワインと自家製トマトピュレ、チーズを加え、茹でたての平打ち麺「タリアテッレ」を絡めた〆のパスタは、極上のミートソースのようだ。

「家ではうどんで締めていたのですが、お店ではちょっとオシャレに、よりイタリア的な食べ方にしました」

 三世代交流のみならず、異文化交流にも役立ちそう。



©MEGUMI KOMATSU

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