top of page
私の執筆対象は「美味」ですが、美味とは主観的なものです。ですから、いくら私が美味しいと感じるものをご紹介しても、皆様の同意を得られるとは限りません。この前提に立ち、飲食店のご紹介をする場合は、ご主人や料理人の狙い・価値観を取材して書くようにしています。私のレストランガイドをお読みになった時、作り手の狙いや価値観に共感していただける場合は、そのお店のお料理を「美味しい」と感じていただける可能性が高いと思います。
私が個人的に美味しいと感じるのは、体だけでなく心にも栄養を与えてくれるようなお料理です。食事によって心が満たされるのは、作り手の愛情を摂取しているためだと思っています。一方、どんなに愛の込もったお料理も、体調不良では存分に味わうことができません。また、どんなに贅沢な料理も、毎日食べれば飽きてしまいます。慢性的な満腹や贅沢を避け、平素は粗食を心がけることも、まっとうな感覚を保つために必要なことだと考えています。
常にベストな状態で美味を満喫したいため、私は仕事でも無理にたくさん食べることは致しません。なぜなら、万全の体調で食事にのぞむことこそ、作り手に対するマナーだと考えているためです。
食べることは、生きること。人間は食べたものから作られるのですから、一食一食をきちんと食べたいと思っています。

小松めぐみ
フードライター
bottom of page