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鮨一條(人形町)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年6月12日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月19日

東京都中央区東日本橋3-1-3 奥田ビル1F  ☎03-6661-1335

営業時間 12:00〜14:00LO、17:00〜21:30  定休日:水曜

予算:昼¥3,780〜、夜¥14,500〜

*2016年「週刊新潮」41号掲載



ネタケースは目で味わう

江戸前鮨の王道を貫く新名店


 数々の有名店で修業した一條聡氏(43)が昨年11月に東日本橋の路地で開業した、昔ながらの鮨店。10席のカウンターには、ネタケースも置かれている。

「魚を見て楽しむことも味わいのうち。鮨屋は東京の東と西でスタイルが分かれるようで、銀座より西側では趣向を凝らした鮨を2万円、3万円のおまかせで出す店が多く、魚はネタ箱にしまって見せませんが、ウチは東の鮨屋の典型です。江戸前の王道を疾走したいから伝統を重んじ、基本に忠実にいきたい」

 一條氏いわく、日本橋界隈は味にも値段にも厳しい客が多い街。長年修業した人形町『六兵衛』には、店のどの職人が薬味を切ったかが分かる常連もいたとか。

「その薬味が、これです」

 と言って旬のカツオのつまみと共に出されたのは、刻んだタマネギとおろし生姜を和えて小鉢に盛った薬味。脂ののったカツオにのせて味わえば、タマネギのシャッキリした食感が魚の旨みと合い、乙な味わいだ。

「タマネギを切るのは見習いの小僧の仕事でした。繊維をつぶさないように切るには技術と志の高さが必要でして、誰が当番かで微妙に味が違っていたようです」

 それを見分けるほどの常連がついた修業先のような店になりたい、と願って一條氏が用意しているのが、4860円の「ちらし寿司」(要予約)。酢飯の上に刻んだガリを敷き、おぼろや干瓢や甘い椎茸、かまぼこ、玉子焼、刺身を並べたちらし寿司は、具の甘味が利いた江戸前の王道の味だ。

「ちらし寿司の具をつまみにしてお酒を飲むなどして、気軽に使っていただければと。毎回何万円も使っていただくようでは、通っていただきにくいですからね」

 普段使いも歓迎とは、嬉しい限り。とはいえ、まずは店の味をつまみと握りで一通り楽しみたいもの。1万4500円からのおまかせは客の食べ方によって内容が異なるが、魚介は近海の天然物。握りの中には必ずコハダ、マグロ、穴子、玉子が登場する。どのネタも大ぶりで迫力があるが、中でも非凡なのが穴子。ふっくらした煮穴子の旨みと、コクのある鮨飯の相性が絶妙なのだ。

「シャリには赤酢を使ってコクを出しています。このシャリは食べ歩き先の店で感動した部分を学んで生かし、普通の鮨屋は粘りが多いからといって敬遠するコシヒカリを、独自の方法で炊いています。鮨はごはんを食べる料理ですから、いいお米を使わないとなりません。穴子は、特に気をつけて良いものを仕入れています」

 大トリの玉子焼は厚さ数㍉の薄さで、刺身のようにシャリを包み込む形。今年8月末から出されるようになった新作だ。

「握った時のシャリとの一体感がほしくて、小柱のすり身を混ぜ、薄く焼くようにしてみました」

 海老のおぼろを挟んで握った玉子焼は、優雅な余韻を残すのだった。


©MEGUMI KOMATSU

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