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はらまさ(曙橋)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年7月10日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月25日

東京都新宿区片町2-2 アーバンクレスト片町1F  

☎03-5312-7307

営業時間 12:00~14:00、17:00~24:00    定休日:日曜日

予算:昼¥3,800〜、夕¥12,000〜(共に税別)

*2017年5月18日発売「週刊新潮」20号掲載


名物は「魚卵の温そうめん」と「トリュフごはん」

高級食材を惜しみなく使う会席料理店


 名物料理は「魚卵の温そうめん」と「トリュフご飯」。その他、穴子、スッポン、渡り蟹など、旬の高級食材をこれでもかという程ふんだんに取り入れた会席料理で人気を博す店が、中央大学市ヶ谷キャンパスの向かいにある。靖国通りに面した暖簾の奥の店内は11席と小体な造り。カウンター越しに穏やかな笑顔で迎えてくれるのはハラマサこと、店主の原正太郎氏(36)だ。4年前の開業時にこの場所を選んだ理由を尋ねると

「上京して初めて住んだのがこの辺だったんです。港区の物件も探しましたが家賃が高過ぎて」

 と笑って庶民感覚を見せるが、月替わりのコースに庶民の慎ましさは皆無で、ご馳走尽くし。9品1万2000円(税別)の5月のコースは「筍とイカの木の芽味噌和え」「穴子と水茄子の酒盗ソース」と、初夏らしい先付けから始まり、続いて揚げ物が登場する。和食では揚げ物は通常後半に登場するが、

「ウチでは皆さんビールからスタートして日本酒に移るので、ビールがなくならないうちに相性のよい揚げ物を出したい」

 と、いうのが原氏の意図。山椒塩で味わう揚げたての春巻には、蒸してほぐしたスッポンがたっぷり包まれ、ゼラチン質の食感とパリッとした皮の対比が小気味良い。ビールを飲み干したところで登場した3品目「渡り蟹の茶碗蒸し」は、表面が蟹味噌と内子に覆われ、一口で濃厚な蟹の味に圧倒される。原氏は蟹の名産地・鳥取県出身、蟹の扱いは朝飯前なのだ。

「蟹の茶碗蒸しは定番ですが、卵前の渡り蟹を使えるのは今月だけ。産卵が終わる来月以降は卵がなくなります」

 お造りは、あん肝醤油とわさび醤油、海苔と薬味と共に出すのが「はらまさ」流。脂ののった鯛や太刀魚にあん肝醤油を付け、薬味をのせて海苔で巻けば、蟹の茶碗蒸しにも負けない濃厚な旨みが広がる。

「京料理の場合はコースに起伏があり、途中で控えめな料理も登場しますが、ここは東京。ですから私はちょっと遊びを加えた、一品一品に力強い旨さがある料理を出しています」

 そんなコンセプトを凝縮したのが、5品目の「魚卵の温そうめん」。カラスミ、ウニ、イクラ、キャビアと花穂をのせた温そうめんには、鯛の白子と青海苔が和えられ、まったりした味わいが魚卵の塩気を中和する。常連はプリン体の多さを畏怖して「痛風そうめん」と呼ぶが、誰も残さないのがおいしさの証だ。

「皆が喜ぶものを作りたい」

 という原氏の思いは以降も徹底して貫かれ、6品目は大きな鰻の白焼がお椀いっぱいに鎮座する「鰻と冬瓜のお椀」。7品目は「のどぐろの焼物と鯛の子の含め煮」と、脂ののった食材が連投される。

 そしてとどめが土鍋で炊いた「トリュフご飯」。目の前で削りかけるトリュフの香りは、陶酔感を覚える芳醇さだ。

「トリュフは通年フランス産で、今はサマートリュフ。トリュフオイルと醤油が隠し味です」

 かつては「トリュフご飯」がつかないコースを1万円以下で提供していたが、

「安いコースは注文する人がいないので5月に廃止しました」

 それでも人気が衰える気配は一向になし。痛風も怖れず食に没頭させる濃厚な料理は、客を惹き付ける力も強烈なのだ。


(2018年8月19日追記)

店舗は下記住所に移転しました。電話番号は変更ありません。

東京都新宿区四谷4-8 ライオンズ四谷タワーゲート店舗棟 B1F


©MEGUMI KOMATSU

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