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四季の味 ふじ芳(両国)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年11月18日
  • 読了時間: 3分

更新日:2019年1月7日

東京都墨田区緑1-15-9 ☎︎03-3631-0408

営業時間:17:00~23:00定休日:日曜、祝日

コース予算:¥3,500〜(税・サービス料別) *カード不可



料亭の椀物をアレンジした

やさしい味わいの「うずら鍋」


場所は東京・両国の京葉道路沿い。今年5月に浅草橋から此方へ移った「四季の味ふじ芳」の名物は、建物の外壁に店名よりも大きく書かれた「うずら鍋」だ。

「ウチはうずら鍋でもっているようなものですから、目立つようにしたんです」

 と言って微笑む藤田芳男氏(74)はかつて新潟の料亭で修業した御仁。昔気質の丁寧な仕事で作る日本料理に定評があるが、中でも人気なのが1982年の創業時から続く「うずら鍋」(1人前1800円/税込、以下同)だ。そのやさしい味わいは通年楽しむことができるが、寒い時期には格別美味しく感じられる。

 店内は1階がカウンター席で、2階は掘りごたつやテーブルの座敷席。様々なおばんざいの大皿が並ぶカウンターに座ったら、まずは「おばんざい盛」(600円)を。大振りの厚揚げや大根、南瓜、里芋、筍などにたっぷりと煮含められた出汁は、ほのかに甘く上品で、「うずら鍋」への期待が否応なく高まるはずだ。

「うずら鍋コース」(4200円〜)は、この他に「お刺身盛り合わせ(4点)」「柳かれい一夜干し焼き」「えびしんじょう揚げ」が登場する、充実の内容。鍋の前にお腹が満たされてしまうほどだが、「うずら鍋」のあっさりした美味しさは別腹だ。具材の主役は勿論うずらだが、100%ではなく、ヒナドリと合わせて挽いたものだという。

「ウズラだけだとパサついてしまうので、ヒナドリと合わせて食感をなめらかにしているんです。つくねのようにまとめると火の通りが悪くなるので、こうやって入れるんですよ」

白い割烹着が似合う女将さんは、そう言って合挽肉を菜箸でふわりとちぎり取り、続いて春菊や白菜などの野菜を入れてゆく。一気に全部鍋に入れるのは

「具材を全部入れた時にちょうどよくなる味だから」

とのこと。澄んだ金色のスープは、鰹出汁と肉の旨味、野菜の香りが繊細なバランスで調和しており、懐石料理のお椀を連想させる味わいだ。

「修業先の料亭で出していた『うずらの吸物』に着想を得て考えました」

とご主人に教われば、なるほどと納得。口の中でほろりとほどける合挽肉は、鶏肉よりもしっかりした風味があるものの、鴨肉ほど濃厚ではなく、細かく潰れた骨の食感がアクセントとなって食べ飽きない。

 最後に必ず味わいたいのは、滋味溢れるスープにご飯と卵がたゆたう〆のおじや。素朴ながらも完成度の高いおじやは、まさに「うずら鍋」の醍醐味である。冬場の予約は数カ月前から埋まってしまうが、

「予約を受けていない20時以降は入りやすいですよ」

 とご主人。冬将軍が訪れる頃は、鍋の前の「せこ蟹」(1300円)や「ぶり刺身(日本海産)」(1300円)も見逃せない。



©MEGUMI KOMATSU


 
 
 

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