top of page

鮨 由う(六本木)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年7月4日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月25日

東京都港区六本木4-5-11 ランド六本木ビルB1F  

☎03-3404-1134

営業時間17:30〜23:00LO    定休日:日曜 

予算¥15,000(税別)〜 

*2017年3月9日発売「週刊新潮」11号掲載



煮切り醤油やツメで魚介の味を引き立て、

「鮨」の魅力を世界に発信


 訪日外国人旅行者の昨年の旅行消費額は前年比7.8%増と過去最高を記録し、内訳は飲食費が増加中。都内の鮨の名店に外国人の姿が目立つのも、新しい鮨店が次々に開業するのも、このご時世の反映か。

 六本木の静かな路地に2016年12月に誕生した「鮨 由う(すし ゆう)」は、鮨の魅力を世界に伝えようと志す、全12席の小体な新店。シンプルな和の空間で楽しめるのはつまみと握りを合わせて約20品、1万5000円(税別)のおまかせだ。

 桧のカウンターに立つ大将の尾崎淳氏(40)は、「鮨かねさか」の系列店など数々の名店で研鑽を重ねた鮨職人だ。席に着いて大将の挨拶を受けると場の空気が凛と引き締まり、静々と刺身が引かれ始める。

 1品目は神奈川・小柴港の新鮮な平目のお造り。上にはかつて醤油の代わりに使われた透明な調味料「煎り酒」がかけられている。

「煎り酒は日本酒に梅干しと鰹節を加えて煮詰めたものです。当店では1升の酒を6時間かけて1合に煮詰めて作っています。平目のような噛み応えのある生魚によく合うので、常備しているんですよ」

 と聞いて注意して味わえば、煎り酒の良さに気付く。醤油のように香りが強くなく繊細な分、平目の旨味が引き立っている。

 以降7品目まで続くつまみの中には「煮ダコ」のような伝統的な江戸前の味もあるものの、「噴火湾産の蟹の蟹酢ジュレがけ」のような独自の料理も多く、変化に富んだラインナップ。醤油と酒と一味唐辛子を塗って焼いたタイラ貝に海苔を巻いて「磯辺巻」として手渡す演出も楽しい。 

 伝統とオリジナルが混在するのは、握り鮨も同じ。大将いわく、

「伝統を尊重しながらも既成概念に囚われず、自由な発想で鮨文化を進化させたいと思っています。そのため『自由』の『由』を店名に使いました。『う』という字には『可能性がある』という意味があります」

 一風変わった店名に込められた想いは、食べ進むごとに伝わってくる。

 握りの1カン目は江戸前鮨の春の王道「春子鯛」の昆布〆。シャリの赤酢の旨味とよく合う春子鯛は酢〆にする店が主流で、昆布〆にするのは珍しいが、

「以前修業した鎌倉の『以ず美』のやり方です。酢〆にする方が簡単なのですが、春子鯛は昆布〆にすると、小さな魚の割にしっかりとした風味が引き出されます。私が大好きな魚なので、通年お出ししているんですよ」

 煮切り醤油を塗った「スナズリ(大トロ)」やおぼろを挟んで握った「車海老」なども王道路線だが、独創的なのは甘く煮て潰してほぐした帆立をのせた「煮帆立の軍艦」。フワフワの食感や煮帆立に塗ったツメの甘さに、味覚が和む1カンだ。

「このツメは蛤や帆立のダシを煮詰めたもの。ツメはこれと穴子専用のものを含めて2種類あり、煮切り醤油も2種類あります」 

 魚介を生かす仕事こそ、鮨の魅力。大将の鮨を食せば、そのメッセージが言葉を超えて伝わってくる。




©MEGUMI KOMATSU

ความคิดเห็น


SUBSCRIBE VIA EMAIL

© 2023 by Salt & Pepper. Proudly created with Wix.com

bottom of page