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匠 鮨 おわな(恵比寿)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2019年6月25日
  • 読了時間: 3分

東京都渋谷区恵比寿南1-17-17 TIME ZONE テラスビル4F

☎︎03-5725-2020 営業時間 18:00~22:00(日曜15:00〜)

定休日:月曜 コース予算 ¥20,000(税サ別)



伝統とモダンが交差する

江戸前鮨のコース20品


「18歳で修業に入ったので、人生の半分が鮨屋となるのが36歳。その節目に独立しようと思っていました」

 2017年夏に計画を実現した小穴健司氏(38)の店「匠 鮨 おわな」は、東京・恵比寿の線路脇の坂上にある。天然の木の清々しさが漂う店内は、カウンター8席と個室1室。おまかせコース(2万円、税サ別)は修業先の名店「すし匠」から受け継ぐスタイルで、ひと口サイズのつまみと鮨が交互に20品以上登場する。伝統的な江戸前鮨の流れを汲んだつまみや鮨は、徹底的に丁寧な仕事が施されているのも特徴だ。

 たとえばある日の最初の品は、濃厚に煮詰めたシジミ出汁にあおさ海苔を浮かべたもの。ぐい呑の中で凝縮したシジミの旨味と磯の香りが相まった一杯は、コースへの期待を高めるのに十分すぎる満足感だ。

 続いて登場する数品のつまみも、趣向を凝らしたものばかり。小ヤリイカの腹にゴマ入りの酢飯を詰めた「小ヤリイカの印籠詰め」などは見るからに手が込んでいるが、一見単なる刺身のような魚も、その魅力が最大限に引き出されるように手間がかけられている。一例であるシマアジは、皮の食感が程よく残り、噛む度に旨味が広がるが、それは3日熟成させてから塩で軽く締めているため。握りの鮨種のスミイカは3日間熟成させて柔らかさと歯切れの良さを両立させ、“イカ墨塩”を振ることで身の甘味が引き立つように計算されている。

 このスミイカの酢飯は米酢で味付けしたものだが、終盤に登場する中トロやコハダの酢飯は赤酢で味付けしたもの。酢飯は、魚に合わせて2種類を使い分けているという。

「赤酢は白酢と比べて旨味が何倍も豊富ですが、魚によって相性の良し悪しがあります。赤酢の酢飯はマグロや熟成させた魚にはよく合いますが、イカや白身魚には米酢の方が合うんです」

 と小穴氏。続けて魚の熟成に対する考えを尋ねれば、

「ねかせた鮨種ばかりだと重くなるので、全体のバランスを見ながらコースの中に数種類ちりばめるようにしています」

と答えてくれた。

 小穴氏の神経の配り方は、仕込みからコースの構成まで、実に繊細。その上、新鮮なボタン海老の握りに海老味噌をのせたり、こぼれそうな程ふんだんにウニをのせた手巻きを手渡ししたり、中トロの薄切りを3枚づけで握るような華やかさもある。中トロの3枚づけは身に弾力のあるマグロを使う場合だけだが、魚は薄切りにすると常温になりやすいため、香りが出て口どけも良くなるそうだ。

 鮨は時代と共に少しずつ進化しているが、それは様々な職人の創意工夫が世間に広まり、影響し合った結果。新しい時代の幕開けと共に、新しい鮨が生まれそうな期待をさせる鮨店だ。


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