Sasuga 琳(銀座)
- 小松めぐみ
- 2018年5月8日
- 読了時間: 3分
更新日:2018年8月23日
東都中央区銀座1-19-12理研ビルB1 ☎︎03-3567-0188
営業時間14:00〜22:00LO(土日祝12:00〜20:00LO) 定休日:月曜
予算:うどんすきコース¥4,800
*2016年「週刊新潮」18号掲載

日本3大うどんは讃岐、稲庭、水沢だが、それに勝るとも劣らぬ新種が、2013年に東京で生まれた。その名も「銀座うどん」。
生みの親は、昭和通りの地下に潜む「流石琳」の店主、新井大琳氏(43)。
「開店に当たって、うどんのつゆを研究したところ、讃岐うどんにも、稲庭うどんにも合わなかったので、独自に開発したんです」
讃岐よりも細くて喉越しが良く、稲庭よりももっちりとしていて柔らかいのが特徴だが、実は新井氏、うどんづくりに関しては初心者だったという。
「私はもともと、この場所にあった蕎麦屋『流石』で働いていたのです。ところが、店の移転に伴い、うどん好きのオーナーに勧められて『手打ちうどんも食べられる蕎麦屋』を始めることになった。蕎麦とうどんは全くの別物なので、最初は試行錯誤でしたよ」
先ず直面したのが、「つゆ」の問題だった。
「私が目指したのは、『流石』のかけ蕎麦のものと同様、最後まで飲み干したくなる、つゆでした。けれど、うどんは蕎麦と違って麺自体の香りが乏しく、蕎麦と同じでは物足りない。それで、つゆの香りを増すべく、ざるそば用のカツオ出汁にウルメイワシとサバを加えたのですが、今度は讃岐うどんでは太すぎ、稲庭うどんでは細すぎた」
で、生まれたのが「銀座うどん」である。
この新種を味わうべく「うどんすきコース」(4800円)を注文すると、かまぼこに練り梅をのせた「板うめ」や「にしんの旨煮」などの前菜3品、出汁巻玉子、蕎麦味噌と、定番の蕎麦前料理が登場した。なるほど、うどん以外の部分は「蕎麦屋」なのだ。
ほどなくコンロと土鍋、具材をのせた大皿が運ばれ、うどんすきがスタート。驚くのは具材の豊富さだ。鶏肉、油揚げにキノコが6種類、野菜が約20種類。鍋には珍しいゴボウ、人参、ズッキーニ、万願寺唐辛子まで含まれている。
「鍋の野菜というと白菜とエノキが定番ですが、ウチでは体に優しく安全な食材をたっぷり召し上がっていただきたく、季節の有機野菜を使っています。おでんの発想を取り入れ、下ごしらえして美味しさを引き出しているんですよ」
ゴボウや人参は、素揚げされた熱が残って、中心が熱々。野菜自体の香りや歯応えが楽しめるのがいい。鶏は肉の臭みがない『地養鶏』という銘柄で、濃厚な味わいだ。
ここでいよいよ「銀座うどん」を投入し、煮ること数分。豊富な具の旨みが染みた麺は、透明感がありながらもモチッとしている。
「生地を2、3日、真空で熟成させているんです。うどんを寝かせるのは邪道と言う方もいますが、やってみたら透明感ともっちり感が出た。当店では十割蕎麦も出しているので、毎日、うどんと蕎麦の“二刀流”で打っています」
喉越しのよいうどんは、細くしなやかな「柳」を思わせ、いかにも「銀座」の趣なのであった。
©MEGUMI KOMATSU
コメント