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赤坂 きた福(赤坂)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年3月21日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月23日

東京都港区赤坂3−13−6 国際天野ビル7F   ☎︎03-3505-1323    

営業時間17:00~24:00   無休

予算:活たらば蟹コース¥20,0 00〜(税別) http://kanikitafuku.com

*2015年「週刊新潮」4号掲載



目の前で職人がさばく

活け蟹の専門店


「蟹には痛点がないので、痛みを感じないんですよ」

 職人はそう言って、今にも歩き出しそうな、たらば蟹の脚を左右4本ずつ揃えると、ザクリと綺麗に包丁で切り落とした――。

 2012年11月にオープンした東京・赤坂の「きた福」は、都内で唯一、職人が目の前で活け蟹をさばいてくれる蟹専門店。札幌の専門店「活カニの花咲」で、その楽しさに心酔した北海道出身のオーナーが、東京にもこれを伝えたいと大将に指導を仰ぎ、開業したのだという。 

 暖簾をくぐり、予約名を告げると、新畳が青々とした掘りごたつの座敷に案内された。店内は全3室の個室のみで、特別感が漂う。

 今は冬季限定の「活松葉蟹コース」(3万240円〜)もあるが、通年の「活たらば蟹コース」(1万6200円)を注文した。

 蕪蒸し、八寸、ふぐの白子と海老芋の唐揚げなど、旬の素材を生かした3品を味わうと、今度は職人が活け蟹を携えて入室してきた。

 今回、担当してくれたのは、銀座の京料理店で修業を積んだ後、前述の「活カニの花咲」で技を磨いた川崎真人氏(32)。彼は冒頭のように蟹の脚を切り落とすと、まるで茶道の点前のように淀みのない所作で先端から関節まで殻を剥き、昆布だしにサッとつけて、

「刺身でどうぞ」

 と、手渡してくれた。プリッとしてみずみずしい触感が、たまらない。続いて彼は、残りの脚を鍋に投入すると、しばし茹で上がるのを待つ。

「味の良い蟹の条件は、身が詰まっていること。当店では、北海道の信頼できる業者さんから航空便で活け蟹を仕入れ、お客様にお出しする直前まで、人工海水を入れた店内の水槽で飼っています。蟹は1杯1.5㌔から5㌔弱までで、6名様までは人数に応じた大きさの蟹1杯を皆さまでお楽しみいただき、7名様からは2杯を分けて召し上がっていただきます。この蟹は2名様用で1.5 ㌔です」

 茹で上がった蟹はほのかな甘味があり、醤油をつけなくても十分いける。その味を堪能している間も、川崎氏は脚をまな板に垂直に立て、包丁を真っすぐに下ろして殻を剥いては、茹で加減を調整して皿に取り分けてくれる。

 全8本のうちの数本は、殻を剥くと表面が硬化し、薄い膜のようになっていた。

「これは新たに殻になりかけている部分で、脱皮前の12〜2月にしか楽しめません。動物性食物繊維のキトサンが多く含まれているんですよ」

 脚の次は、茹でたての爪を蟹酢でいただくと、小さなハツの刺身、お腹の身に当たる「フンドシ」、脚の間接などが出された。

「フンドシは、海老の身に当たる部分が、進化の違いでお腹に畳み込まれたもの。味が濃厚です」

 締めは、白飯とイクラ、和牛のしぐれ煮に、しじみの味噌汁。蟹の甘い後味がすっきりするよう、敢えて蟹尽くしにしないところが、心憎い。また蟹を食べたくなってしまうのだから。



©MEGUMI KOMATSU


(2018年8月追記)

現在、活たらば蟹コースは¥20,000〜(税別)

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