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すき焼割烹 日山(人形町)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年5月10日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月25日

東京都中央区日本橋人形町2-5-1  

☎03-3666-2901 

営業時間11:30〜14:00LO、17:00~21:00LO 

定休日:日曜、祝日 予算:しゃぶしゃぶコース昼¥9,180〜、夜¥10,800〜(要予約)、すき焼コース昼¥7,560〜、夜¥9,720〜

http://hiyama-gr.com/kappou/   

*2016年「週刊新潮」4号掲載




老舗「すき焼き割烹」で味わう

隠れ名物のしゃぶしゃぶ


 日本全国では、年間に100万頭の牛が精肉されるが、きめ細かなサシが特徴の黒毛和牛はごく一部。そのうち、最高ランクに位置する4~5級の雌牛は、1割強しかないという。

 そんな極上の黒毛和牛を独自の基準で厳選し、年間に約300頭を仕入れているのが、東京・人形町の老舗「すき焼割烹 日山」。もとは大正2年創業の食肉店だけあって、目利きは確かである。

「『きめ細かな肉質』、『上品な甘味』、『脂の口どけのよさ』、『コクのある香り』という4つの条件を満たしているものだけを仕入れ、うちのオリジナルブランド『日山特撰・和牛肉』として扱っています」

 とは、取締役営業部長の益山初男氏(60)。

「良質な牛肉は焼くと脂肪が肉の中で溶け、かえってふんわりするんです。うちの目利きは長年の経験から、その肉が膨らむものかどうか、実際に焼かなくても分かるんですよ」

 この「日山特撰・和牛肉」のすき焼きこそ、同店の看板料理だが、今回は別の隠れ名物を目当てに訪れた。秘伝のスープを使ったしゃぶしゃぶもまた、絶品なのである。

 全室個室の数寄屋造りの店内を仲居さんに案内され、一枚板のケヤキ天井が見事な一室に辿りついた。しゃぶしゃぶの「ロース肉」(1万2960円)と「モモ肉」(1万800円)の2種類のコースから選んだのは、脂の旨味と甘みを存分に味わえる前者。

 先付と前菜の盛り合わせを味わうと、さっそく仲居さんが「しゃぶしゃぶ」用の鍋と具材を運んできた。細かなサシが入った鮮紅色の大きな肉は、2人前で10枚。これに、根菜や豆腐、生麩など約20種類の食材がついている。

「日によって肉の産地が変わるのですが、本日は山形牛で、量は1人前で150㌘前後です」

 小林浩料理長(52)がそう言うと、仲居さんが肉をスープにそっとくぐらせ、お皿によそってくれた。

「『日山特撰・和牛肉』は脂の融点が低く、口に入れると体温で溶け、美味しさが広がるんですよ」

 なるほど、自家製ポン酢をつけると、和牛の濃厚な旨みと香りがしっかりと感じられつつ、さっぱりとした口当たり。口の中でほどけていく柔らかな食感も絶妙である。が、さらなる美味しさの秘訣が、スープにあるという。

「お湯や出汁に肉をくぐらせると旨味が逃げてしまうので、先代の料理長が考案したのが、このスープ。ショウガやセロリといった香味野菜に牛スジ、豚バラなどの肉を入れ、1日かけて煮込みます。このスープに肉を潜らせると、相乗効果で旨味がふくらむんですよ」

 肉を味わっている時は気づかないスープの旨味も、春菊、白菜、ホウレンソウなどの葉野菜を噛むと、溢れ出てくる。


©MEGUMI KOMATSU


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