top of page

すし佐竹(銀座)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年7月29日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月22日

東京都中央区銀座8-18-16  

☎03-6775-3878

営業時間  12:00〜14:00LO、17:00〜22:00 LO  不定休

予算:昼¥2800・¥4800、夜¥12000・¥20000(共に税別)

https://sushi-satake.com

*2017年11月30日発売「週刊新潮」47号掲載


熱いシャリで握る鮨と

日本酒のハーモニー


 東京・銀座には約600軒の鮨屋がひしめく。だが、熱い酢飯で鮨を握るのはおそらく1軒だけだろう。

 その店の名は「すし佐竹」。銀座の有名店やホテルニューオータニ「久兵衛」で活躍した、この道25年の佐竹大氏(43)が開いた店だ。

 場所は、昭和通りを越えた新橋の料亭街。かつて界隈の芸者衆の間で「新橋色」と呼ばれて流行した鮮やかな青緑色の暖簾をくぐると、堂々とした佇まいの桧のカウンター8席が現れる。

「カウンターと付け台の桧は、関東屈指のパワースポットである秩父の三峯神社のご神木だったものです。カウンターが神様ですから、ウチは神棚がないんですよ。神様の上に鮨を出しちゃうことになるんですけどね」 

 大将の軽快なトークに空気が和らいだところで、飲物のメニューを見れば、お酒は日本酒、焼酎にワインも色々。中でも東京・芝の日本酒「江戸開城」(1500円〜)は、

「このお酒が生まれたのは去年の8月19日で、ウチの開業日と偶然同じ」

 という、縁の深い銘柄だ。ワイングラスで味わう純米吟醸原酒は、食欲が増すスムーズな飲み口である。

 おまかせコースは1万2000円(税別、以下同)と2万円の2種類で、前者のコースは12品が基本。鮨だけの12品とするか、つまみを混ぜて12品にするかは、客の希望次第だ。

 つまみも所望すれば、淡路の真鯛や三重のクエ、皮目を炙った佐渡島の鰹、カマスなど、旬の魚介6品が登場。そして、コースが折り返し地点を迎えると、大将がおもむろにこう言う。

「シャリの温度が高いので、握る前に魚を常温に戻します。少しお待ち下さい」

 その間に期待は否応なく高まるが、握りの1カン目のマグロは期待以上の非凡な味わい。酢飯の熱でマグロの香りが際立ち、赤酢の香りと調和する感覚が絶妙だ。訊けば、佐竹氏が熱い酢飯を使うようになったのも、マグロとの相性の良さがきっかけだったと言う。

「マグロは握りにしか使いませんので、味見する時もシャリをつけるのですが、去年、偶然炊きたてのシャリを使った時にマグロとの相性に気付いたのです。最初は鮨なのに熱いシャリなんて……という抵抗もありましたが、試してもらった方からの反応もよかったので、自分を信じてやってみることにしたんですよ」

 熱い酢飯は脂の多い魚でないと合わせにくいそうだが、例外的なのは車海老。2カン目の天草産の車海老は、温かな酢飯によって身の甘みと味噌の旨みが引き立つ逸品だ。熱燗を合わせれば、海老と酢飯と日本酒の香りの三重奏が楽しめる。

 続いて人肌に冷めた酢飯で握る白イカとマツカワガレイを挟み、5カン目は再び熱いシャリの「のどぐろ丼」。ふっくらと焼かれたのどぐろをほぐして混ぜれば頬が緩み、イクラの小丼で〆れば身も心もほかほかに。寒い冬には殊のほか醍醐味が感じられる鮨店である。


©MEGUMI KOMATSU

Comentários


SUBSCRIBE VIA EMAIL

© 2023 by Salt & Pepper. Proudly created with Wix.com

bottom of page