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たこや三忠(千駄木)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年6月4日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月23日

東京都文京区千駄木3-1-17   ☎03-3824-2300

営業時間11:30〜14:00(平日のみ)、18:00〜23:30(土日祝17:00〜)

定休日:水曜  予算:多幸(蛸)コース1,404円〜

*2016年「週刊新潮」27号掲載



タコづくしのコースを満喫


「土用のタコは親にも食わすな」と言うように、夏ダコの美味しさは格別。そんな旬のタコを満喫するなら、東京・千駄木は団子坂の居酒屋「たこや三忠」だ。

 大きな提灯が下がる店先から中に入ると、店内は活気に満ちた居酒屋らしい雰囲気。カウンターの中で腕を振るう鉢巻姿の店主、佐藤由之氏(58)は、日本料理歴40年のベテランだ。

「昔は生のタコを扱う店が少なかったのですが、独立する前に務めていた日本料理店で生のタコを仕入れて出したら、好評で。それで、独立する時はタコをウリにしようと思ったんです。切り方によって食感が変わるタコの面白さを表現したいと考えています」

1987年の開業当時はタコ料理とそれ以外の料理が半々の割合でスタートしたが、試行錯誤しながら完成したオリジナルのタコ料理が徐々に加わり、現在の品揃えは30品以上。品数違いの3種類が用意されたタコづくしのコースの中から、8品5400円の「タコ∞(たこむげん)」を注文した。

 1品目は久里浜産の焼きダコとタコ刺し、釧路産のタコ刺しの盛り合わせ。

「タコは三陸を境にして種類が変わり、三陸以南で獲れるのはマダコ、以北で獲れるのは水ダコです。マダコは早い潮流で締まった身に育つ久里浜産、水ダコは大きなものが獲れる釧路産の活ダコを使っています。水ダコはマダコより柔らかいのですが、歯応えが楽しめるように、足の付け根のよく動く部分を刺身にしているんですよ」

久里浜産の焼きタコブツは噛むほどに広がる風味が魅力だが、釧路産の水ダコは柔らかく、それでいて歯切れがよい。2品目は梅肉をのせた真ダコの薄造り。

 そして3品目は「おどり食い」。皿に吸い着いて離れないタコの足を箸で取り上げ、ごま油と塩を付けて口に入れれば、吸盤が上顎に吸着。それを舌で剥がし、コリコリした甘い身を噛み切るのが楽しい。

 次の「タコの雲丹和え」は雲丹と一体感となって溶ける柔らかさだが、5品目の「たこ焼」はカリカリの生地の中からプリッとしたタコの身が現れ、天ぷらは足の吸盤がプチプチ弾ける食感が絶妙。

「たこ焼きはさつま揚げのように、衣に魚のすり身を混ぜています」

 佐藤氏のアイディア料理は、まだまだ続く。小さな「吸盤の唐揚げ」は、噛もうとすると口の中で逃げ回るイキのよさ。さらに驚くのが鉄板にこんもり盛られた「明石焼」で、まるでスフレのようなふわりとした食感だ。

「オムレツにヒントを得て、メレンゲを使った明石焼です。泡立てた卵白には刺身用ハンペンを混ぜています」

 フィナーレは皿の模様が透けて見えるほど薄く切られた水タコの「たこしゃぶ」。

昆布出汁にくぐらせてポン酢をつければ、繊細な旨みが広がる。

 旬のタコを独り占め、多幸感に包まれる。


©MEGUMI KOMATSU


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