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INUA(飯田橋)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年8月30日
  • 読了時間: 3分

東京都千代田区富士見2-13-12 KADOKAKAWA富士見ビル9F

営業時間: 17:00〜21:15LO

定休日:日曜、月曜 コース予算:¥29,000(税サ別) 

https://inu.jp(予約・問い合わせはHPにて受付)

*2018年8月23日発売「週刊新潮」32号掲載



北欧のイノヴェーティブの雄が

日本の食材で創る最先端料理


 開業前から2カ月先まで予約で満席──異例の注目を浴びつつ6月下旬にオープンした「イヌア」は、国内外の美食家の話題を集めるレストランだ。何しろ世界で最も予約が取りにくいデンマークのレストラン「ノーマ」と関係の深い店である。「ノーマ」といえば、投票式のレストランランキング「世界のべストレストラン50」で4度にわたって世界1位に輝き、デンマーク経済にノマノミクスと呼ばれる影響を与えた伝説的な店。そのオーナーシェフが、自著の出版等を通じて縁を持ったKADOKAWAと提携して開業したため、店の場所は出版社のビル内という異色のロケーションだ。

 建物の脇に新設された専用の入口とエレベーターを使って入店すると、店内は和紙をあしらった照明と北欧家具が調和したモダンな空間。60席のダイニングのテーブルは上質なものだが、クロスは掛かかっておらず、どこかカジュアルな雰囲気もある。

 一方、お値段はコース2万9000円(税サ別、以下同)。一体何料理かというと、

「◯◯料理という枠には当てはまりません。日本の食材を、北欧料理の技や、私が世界中を旅して体得した調理法で生かした料理です」

 と、ヘッドシェフのトーマス・フレベル氏(33)。「ノーマ」で食材の研究開発部門のトップを務めてきた彼は、以前から日本各地を旅し、多くの生産者と信頼関係を築いてきたという。

「2015年に東京でポップアップレストランを開くために来日して以来、日本の食材に魅了されてきました。ですので、東京への赴任は願ってもない幸運です」

 そんな彼が使う食材の中には、市場に出回っていないものも色々。例えばコースの1品目「シトラス」に使われる食材は、甘酸っぱい柑橘類の果実と沖縄産スナックパイン、長野県産キハダベリー、石垣島産ロングペッパーのりんご酢漬け、柚子の花の塩漬けという具合だ。初めて知るスパイスやハーブの香り、辛味、苦味、酸味は、実に新鮮。ちなみに食材を塩漬けや酢漬けにして用いるのは、北欧の伝統だとか。

「北欧は冬が長いため、食材を酢などに漬けて保存して使う習慣があるのです」

 6品目の「舞茸」は、5日間ねかせた舞茸を3日間かけて燻製させているため、驚くほど旨味が凝縮。それを味噌、米麹、松のダシで煮込んでいるとか。おなじみの食材にこんな表情があったのかと思うのは、バナナの葉に包んで焼いた「えのきのステーキ」も然りだ。

メインの「ごはんと蜂の子」が登場すると、「ノーマ」では蟻が使われることを思い出すが、奇を衒っているわけではないそう。

「蜂の子は揚げると胡麻のように香ばしくて美味しいですよ」

 食せば蜂の子が弾け、その油分が米粒に絡む。デザートまで13品味わえば、「海外から見た日本」で冒険した気分だ。


写真:沖縄のスナック・パインとシトラス「シトラス」、トーマス・フレベル氏、湯葉に包まれた野菜の花「ゆば」


©MEGUMI KOMATSU


次回は9月6日発売「週刊新潮」34号で「お肉屋けいすけ三男坊」の記事をお届けします

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