てんぷら 銀座 天亭(銀座)
- 小松めぐみ
- 2018年7月18日
- 読了時間: 3分
更新日:2018年8月23日
東京都中央区銀座8-6-3 新橋会館B1
☎03-3571-8524
営業時間 11:30〜14:30LO、17:00〜21:00LO
定休日:日曜、祝日の夜
予算:昼¥2,000〜、夜コース¥6,500〜(税別) 要予約
http://ginza-tentei.jp
*2017年8月2日発売「週刊新潮」31号掲載

「濃くて軽い」衣で味わう
老舗の夏の天ぷら12品
先月7月(2017年7月)に31周年を迎えた「天ぷら 銀座 天亭」。先代の故越田吉徳氏の薫陶を受けた千葉健一店長(49)は、勤続27年のベテラン天ぷら職人だ。カウンターの端に置かれた0度のガラスケースの中ではいかにも新鮮そうな野菜や魚が輝き、席に着くと自然に視線が奪われる。
「江戸前の天ぷらのタネに欠かせない穴子やキスは、いずれも春先から夏が旬です。『夏こそ天ぷら』という有名なキャッチフレーズは、天ぷらの魚の旬と関係しているんですよ」
そんな話を千葉氏に聞けば、いよいよ期待が高まる。
夜のコースで人気の「さくら」は、サラダと天ぷら12品に御飯、赤出汁、お新香、フルーツが付いて8500円(税別)。巻海老3本からスタートする天ぷらは、レアな部分を残すわけではないが揚げ過ぎでもなく、食材の持ち味を品よく引き出した揚げ加減だ。巻海老はプリッと甘く、きつね色の衣は卵の風味がほのかに利いているのが印象的。
「当店の衣は“濃くて軽い衣”をイメージし、卵を多めに使っています。小麦粉と水の配合比率はその時の湿度や気温によって微調整しているんですよ。揚げ油は太香胡麻油が主体。これにコーン油を少しブレンドしています」
2品目のキスはホクホクの身に滋味が溢れ、これが旬の味かと感じ入ることしきり。次の2品はこの店独自のタネで、海老しんじょを塗った椎茸に続き、ほぐして棒状に形を調えた帆立が順に供された。
「椎茸の傘の裏は油を吸収しやすいのですが、海老しんじょを塗ると油を吸い過ぎることがなくなります。帆立はほぐして細長くすることで火が通りやすくなり、甘みを存分に引き出せます」
肉厚な椎茸の旨みと海老の甘みは抜群の相性。しっとりした帆立は繊維のほぐれ方が絶妙で、レモンと塩によって甘みが引き立つ。
5品目からは野菜と魚が交互に登場。千葉氏いわく、野菜と魚では、衣のつけ方も揚げる温度も変えているとか。
極太のグリーンアスパラガスやみょうが、ベビーコーン、万願寺唐辛子は、素材の色が透けて見えるほど衣が薄く、野菜の香りや歯触りが存分に楽しめる趣向。
高温でカラリと揚げられた鱧や穴子は、皮目の脂のコクと衣の香ばしさが相まって濃厚な味わいだが、油切れがよく軽やかな食べ心地だ。琵琶湖の若鮎は約10㌢と小ぶりながら、ワタの苦味と香りが秀逸。
「鮎は骨が気にならないように、敢えて小ぶりのものを仕入れています。琵琶湖は水温が低いので鮎があまり大きくならないんですよ。苔しか食べませんので、香りもいいですしね」
小海老のかき揚げを天茶で楽しめば、生ワサビの香りと共にかき揚げの香ばしさが広がり、衣の美味しさに再び唸らされるのだった。
©MEGUMI KOMATSU
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