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ふた味(表参道)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年7月8日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月23日

東京都渋谷区渋谷2-2-2 青山LUKA1F  

☎03-6427-9316

営業時間 17:30〜22:00最終入店 

定休日:日曜、月曜不定休

コース予算:¥12000〜(税サ別) 

http://hutaazi.wp.xdomain.jp

*2017年4月6日発売「週刊新潮」15号掲載



月替わりの日本料理8皿に

日本酒8種を合わせてペアリング


「料理と日本酒を合わせて新しい味覚を完成させる。今までとは一味も二味も違う料理の楽しみ方をご提案したいと思い、2017年1月にオープンしました」

 西山道泰料理長(53)は、昨年まで西麻布のミシュランの星付き日本料理店「いち乃」の料理長として活躍したベテラン。かつて訪れた日本酒バーで「料理と日本酒のマリアージュ」に開眼し、そこからこの店のコンセプトが生まれたとか。

 店内は新しい白木がまぶしいカウンター6席と個室が1室。裏手には個室直通の出入り口もあるとか。

 1万2000円(税サ別)のおまかせコースの8品にそれぞれ日本酒を合わせる「日本酒ペアリングコース」は、8種類で計2合強。価格は3500円から5000円(税サ別)の幅で、月ごとに変動する。

「月替わりのお料理の1品1品に、完璧に合う日本酒を毎月選んでいます。相性の良さにはそれぞれ確かな根拠がありますので、説明も併せて楽しみ下さい」

 これを注文すると、支配人の田中隆太氏が1種類目をお猪口に注ぎながら

「福井県の酒蔵、一本義(いっぽんぎ)久保店の大吟醸熟成酒、一朋(いっぽう)でございます」

 と説明し、西山料理長からは引きたての出汁の入ったお猪口が出される。出汁に続いてお酒を飲めば、出汁の鰹の香りが際立つよう。

「このようにお料理を引き立てるお酒をお出しします」

 以降の料理と酒の相性は、バリエーションも様々。たとえば「新玉葱のすり流し」には茨城県・愛友のどぶろくを合わせ、酒に含まれる乳酸で新玉葱やウニの甘みを引き立てる趣向。通常の3倍の麹を使って仕込んだ秋田県・金紋秋田の「×3亜麻色」はみりんのように甘く、天ぷらと共に味わえば山菜の苦味と相まって甘苦い味が生まれる。他方、富山県・千代鶴の純米吟醸と「おこぜの薄造り」は至って王道の相性。だが、

「お造りは日本酒と合うものと思われていますが、実は合わない組み合わせも少なくない。この純米吟醸はちり酢と相性が良く、吟醸香が酢と共に消え、酸がおこぜの甘みを感じさせます」

 さらに見事な相性が蛤真丈のお椀と神奈川県・残草蓬莱(ざるそうほうらい)の特別純米の燗冷ましで、交互に味わえば酒も吸地のように感じられる。

「吟醸酒を合わせると蛤の苦味や渋味が出てしまいますが、この組み合わせは特別純米酒と貝のコハク酸が合うんですよ」 

 西山氏が味を追求する背景には、かつて修業した銀座の料亭『花蝶(かちょう)』で、師匠に「味の中に味を見つけろ」と教わった影響もあるとか。

「料理の味は素材と出汁と調味料が合った時に一味深まり、酒を合わせればさらに一味深まると思います」

 二味の世界は実に深い。


©MEGUMI KOMATSU

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