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みくり(銀座一丁目)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年7月24日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月23日

東京都中央区銀座1-27-11 銀座葵ビルB1   ☎03-6264-4489

営業時間 18:00〜20:30LO  

不定休(日曜日を中心に月6回)

コース予算¥13,000〜(税サ別) 

http://mikuri-ginza.jp

*2017年11月1日発売「週刊新潮」43号掲載



若き店主の心意気が光る

骨のソースを添えた甘鯛の松笠焼


 2016年6月に開業した割烹「みくり」の場所は、銀座といっても喧噪から離れたエリア。玄関先で焚かれたお香のほのかな香りに気付けば、扉を開ける前にふと気持ちがリセットされる。店名が神饌の調製所「御厨(みくり)」を想像させるからか、まるで香りが結界となっているかのようだ。

「店名は、料理をお出しする場所という意味に加え、自分の名字の栗原のクリという響きも入っているため『みくり』としました」

 店主の栗原大輔氏(36)の口調は実にさらりとしているが、1万3000円(税サ別)のコースを味わえば料理への深い思いが伝わってくる。約9品の料理は、どれも几帳面なほど丁寧に作られているのだ。

 たとえば先付の「石川芋の雲丹射込み」は、出汁で煮含めた石川芋をつぶして塩雲丹を包み、新挽粉(粒子の細かい米粉)をつけて揚げ、菊花餡をかけたもの。2品目はサッと炙ったヤリイカと生カラスミを合わせた一品で、脇役の銀杏も芸が細かい。

「銀杏は『餅銀杏』という仕事をしたものです。銀杏の殻を剥いた後、生米と一緒に茹でるとこのように白く大きく膨らむんですよ」

 食感ももっちりして、カラスミの食感と重なり、満足感が膨らむ。

 引きたての出汁と蟹しんじょうの旨みが相まったお椀を挟んで登場するお造りでは、珍しい高級魚に出合える楽しみもある。たとえば対馬のヤイトガツオ(別名スマ)は、カツオとマグロの中間のような濃厚な味わい。炭に直接つけて焼かれた皮目の香ばしさが、日本酒を呼ぶ。

「魚は築地から4割、福岡から6割を仕入れています。福岡の市場で朝揚がった魚は航空便で15時に届くため新鮮ですし、東京ではあまり手に入らない魚も入れられるのが魅力です」

 お造りの中には、高級魚として人気の対馬の鯖も小ぶりな棒寿司の姿で登場。とろけるような脂の旨みは、さすがブランド鯖だ。

 5品目の焼物は、これも福岡直送の赤甘鯛。ウロコに熱い油をかけてパリパリに焼く「松笠焼」という料理法は古典的だが、皿には頭や中骨を煮詰めて作ったソースが添えられ、斬新な趣だ。白濁したとろみのあるソースを魚につければ、甘鯛特有の香りを引き立てる。栗原氏にソースを添えた狙いを尋ねれば、

「頭や骨は、味は良いのに食べづらいので、味わいやすいようにソースに仕立ててみました」

 派手さはないが、美味しいものを食べさせたいという思いがじわりと染みる。

 コースの後半は「帆立貝の昆布〆とイクラ、赤カブ、生木耳の和え物」「鴨と九条葱の小鍋仕立て」と続き、〆の食事は「サワラとムカゴとエノキの炊き込みご飯」。旬の食材の旨みが染みわたった山形県産つや姫の新米は、お代わりせずにいられない。

©MEGUMI KOMATSU

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