エル ビステッカーロ デイ マニャチョーニ(銀座)
- 小松めぐみ
- 2018年4月12日
- 読了時間: 3分
更新日:2018年8月23日
東京都中央区銀座3-9-5 伊勢半ビルB1 ☎︎03-6264-0457
営業時間 11:30~14:30LO、18:00~23:00LO 定休日:月曜
予算:ランチ¥1,200〜、ディナー(アラカルト)¥1,500〜 http://bisteccaro.tokyo
*2015年「週刊新潮」30号掲載

イタリア帰りのシェフが腕を振るう「Tボーンステーキ」
肉ブームを追い風に、本場米国式のステーキハウスが増えているなか、2015年5月、新手の「イタリア式」ステーキハウスが登場した。その名は「エル ビステッカーロ デイ マニャッチョーニ」。イタリア語の店名は覚えられなくても、意味は明快。すなわち「食いしん坊達のためのステーキ職人」である。
「時々、看板を見たイタリア人が、ふらっと入ってくるんですよ」
そう言って微笑むのは、オーナーシェフの山崎夏紀氏(41)。都内の有名イタリア料理店に勤務後、2007年から6年間、ローマで修行した経歴を持つ。
「滞在中、私も月に1度はステーキハウスに通っていたのですが、帰国したら、気軽に赤身のステーキを食べられる店がない。それで思い余り、自分でつくってしまったんです」
看板メニューは、T字型の背骨とアバラ骨を挟んでヒレとサーロインを伴う「Tボーンステーキ」。アメリカ産牛肉の中級以上のグレードで、1㌔8000円からという値段は、相場の半額に近い。
2人分とはいえ、骨を外しても正味800㌘はあるから、果たして完食できるのかが不安である。
ウォーミングアップも兼ねて、ステーキが焼けるのを待つ間、前菜の「生ハムとサラミの盛合わせ」(2160円)と「水牛のモッツァレラチーズ」(1404円)を注文した。
切り立ての生ハムとサラミは6種類。1人分で12切れもあり、濃厚な旨味と塩気にワインが進む。水牛のモッツァレラチーズにはミルキーな甘味が凝縮されていて、お代わりしたくなる美味しさだ。
もちろん、シェフの本領であるローマの料理として、トリッパ(牛の胃袋)やオックステール(牛の尾)の煮込みもあるが、とりあえずステーキを待つ。
10分程すると、40㌢四方の木製の板皿が運ばれてきた。分厚くカットされたヒレが5切れと、サーロインが8切れも乗っている。そのボリュームに圧倒されつつも、見るからに芳ばしい肉の表面と、しっとりと柔らかそうな内側に、食欲がそそられてくる。
ヒレは柔らかでさっぱりした旨味があり、サーロインはそれよりも旨味が濃厚で噛み応えがある。その違いを楽しんでいたら、難無く完食してしまった。
「和牛の霜降り肉では、こうはいきませんが、赤身ならペロッといけるでしょう? 美味しさの秘訣は火加減にあります。イタリアでは炭で焼きますが、ウチでは少しでもリーズナブルに提供するために、高温のグリルと低音のオーブンで合計20~30分焼く。こうすることで、表面はカリッと、中はしっとりと仕上がるんですよ」
思いの外、なおもお腹に余裕があるので、最後にローマ発祥のパスタ「スパゲッティカルボナーラ」(1620円)を味わった。じっくり炙ったグアンチャーレ(豚ほほ肉の塩漬け)の旨味と香ばしさが、卵の濃厚な味わいと絡み合う。
食いしん坊達のためのステーキ職人は、イタリア料理の達人でもあるのだった。
©MEGUMI KOMATSU
Commentaires