オステリア デッロ スクード(四谷三丁目)
- 小松めぐみ
- 2019年3月8日
- 読了時間: 3分
東京都新宿区若葉1-1-19 Shuwa House 014 1F ☎03-6380-1922
営業時間:月・水12:00〜13:30LO、月〜金18:00~21:30LO、土12:00〜19:00LO
定休日:日曜日、他月1回不定休 コース予算:¥5,500〜、席料¥500(共に税別)
要予約(予約は2名より。ランチは2日前まで)

年3回替わるメニューに
毎度違う地方の伝統料理が30品
イタリア料理は日本人の食生活にすっかり根付き、レトルトのイカスミパスタソースがスーパーに並ぶ程。しかし「オステリアデッロスクード」に行くと、日頃食べているイタリア料理との違いに驚かされる。何しろメニューを見て想像できる料理が3分の1もないのだ。
「当店の料理は現地では当たり前の伝統料理ばかり。イタリアの日常を表現することが、お客様にとっての非日常になると思います」
そう語る小池教之氏(46)は、イタリア20州を巡り、各地の郷土料理を体得したシェフ。その豊富な引き出しを生かしたメニューには、その時にテーマとする州の郷土料理が常時30品ほど並び、テーマは約4カ月ごとに変更される。開業からの1年間に出されたのは北部ヴェネト州、南部カラブリア州、中部エミリア・ロマーニャ州の料理で、現在は中部ウンブリア州の料理を提供中だ。
コースは全3種類。料理を選ぶのが難儀な人には8000円(税別、以下同)のおまかせコース(要予約)がおすすめだが、4品5500円〜のプリフィクスコースは海外で料理を選ぶような冒険の楽しみがある。メニューの最初にはテーマ州の紹介文がある為、これを選択の参考とするもよし。
例えばウンブリア州は山に囲まれた古都で、料理は食材を生かした素朴さが特徴。名産品は白インゲン、スペルト小麦、レンズ豆、生ハムなどの豚肉加工品と冬の黒トリュフだという。
これらの食材を6品6500円のプリフィクスコースで堪能すべく選んだのは、「ウンブリア式前菜の盛り合わせ」と「レンズ豆と栗のミネストラ(スープ)」。前者の皿には生ハムやレバーペーストなどお馴染みの料理が登場したが、豚肉の加工品はノルチャ産であり、特産の大麦のサラダを添えている点もウンブリア式。後者はほくほくの豆や栗の食感に心が和む、“食べるスープ”だ。パスタは、紐状の手打ち麺「マンフリーコリ」に黒トリュフペーストを絡めたものと、ツルッとしたショートパスタ「ウンブリチェッリ」に猪のラグーソースを和えたもの。名前は聞き慣れなくても、どれも郷土料理ゆえ、親しみやすい。
「前衛的な料理が注目を浴びるご時世だからこそ、伝統料理を守りたい。盾という意味の『スクード』を店名にしたのは、伝統を守る盾でありたいからです」
と言うシェフは、料理の歴史にも精通。メインのイベリコ豚をイタリアの魚醤でマリネしてからローストするのは、ローマ史に密接に関わったこの地域らしい手法で、魚醤はかつてローマから「塩の道」を経てウンブリア州へ運ばれた食材なのだとか。魚醤によって引き立てられた豚の旨味は奥深く、ひと口ごとに陶然。
初夏からは白ワインに合う北イタリアの山の料理が出される予定。記念日に通い続けたくなる一軒だ。
©MEGUMI KOMATSU
次回は「週刊新潮」11号にて、「味ひろ」の記事をお届けします
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