キッチャーノ(赤坂)
- 小松めぐみ
- 2018年6月18日
- 読了時間: 3分
更新日:2018年8月18日
東京都港区赤坂3-13-13 赤坂中村ビルB1 ☎03-3563-0322
営業時間 11:30〜14:00 LO(月〜金のみ)、18:00〜21:30 LO
定休日:日曜 予算:バザス牛を含むコース(2名から)1名16,500円(税サ別)
http://www.m-onecafe.jp/chicciano/
*2016年「週刊新潮」47号掲載

フランスの銘柄牛“バザス牛”は
骨付き1㌔以上の塊をステーキで
熟成肉ブームが久しく続くなか、美食家の新たな興味の矛先が向かいつつあるのが欧州牛。なかでもバザス牛は、日本の神戸牛のような、仏ボルドー地方の南で育てられる銘柄牛だ。これをいち早く扱う一軒が、赤坂一ツ木通りに面したビルの地下にある「キッチャーノ」。肉料理に特化したイタリアンである。
「もともと欧州牛を使いたいと思っていた時に輸入業者から勧められ、仕入れるようになったのが1年前。バザス牛は、赤身の繊細で深い味わいが魅力です。赤身肉をしっかり食べたいというお客様に好評ですね」
と語るのは、料理長の山縣類氏(50)。フランスやイタリアでの修業を経て、帰国後大阪で独立し、2011年よりここで腕を振るう。
「バザス牛はトリの胸肉ほどの脂肪分しかなく、和牛の格付けだと1等級ぐらい。欧州では牛の脂肪を価値としてみないので、これが向こうでは最高級の牛なんです。脂が少ない牛は大きな塊で焼き上げる方が美味しく仕上がりますので、バザス牛は2名様以上でご注文いただくようにしています」
メニューはおまかせで、値段はメインで選ぶ肉の銘柄によって異なる。例えばバザス牛を注文すると、コースは1人あたり1万6500円(税サ別)。注文すると、シェフが焼く前の肉の塊を見せに来てくれた。
「本日のものは22日間熟成させたサーロインです」
大きな皿に盛られた生肉は、骨付きで約1.1㌔。これで2人分?と驚くと、
「骨を外すと正味550㌘ぐらいになりますので」
と山縣氏は言い、何食わぬ顔で厨房へ。ほどなくして運ばれてきたのは、生ハムとメロンの盛り合わせ。おなじみの組合せだが、生ハムはしっとりとなめらか。
「削りたての鰹節のように、生ハムも切りたての味わいは違うはずだと思いまして」
切り立てを提供するために店内に設置された巨大な生ハムスライサーは、イタリアからの直輸入。1台で車が買える程の代物だとか。さらに1時間ほどかけて前菜2種、パスタ2種を楽しむと、バザス牛が登場した。
大きな塊肉は10切れほどにカットされているが、1切れは50㌘超の計算だ。
おすすめに従い、塩だけで味わうと、味わいはサーロインというよりフィレ肉のよう。一切サシが入っていないため噛み応えがあるが、肉質はキメ細かく、段々と豊かな風味が広がる。途中で赤ワインソースを付ければ、また味わいが深まる趣向。かくして4切れ、200㌘以上を楽しんだところで満足感と満腹感に浸っていると、
「お持ち帰りされますか?」
と山縣氏が気遣ってくれた。そこで持ち帰ることにし、次回は量を少なめにできないかと尋ねると──。
「骨付きの塊肉はノコギリで切るので、これ以上薄くは切れないんです」
今さらながら、欧米の肉食文化にカルチャーショックを覚えたのだった。
©MEGUMI KOMATSU
Comments