ケジャン★オールスターズ(西麻布)
- 小松めぐみ
- 2018年8月4日
- 読了時間: 3分
更新日:2018年8月22日
東京都港区西麻布2-24-1萬治ビル 2F
☎ 03-6805-1538
営業時間 18:00〜23:30 不定休
コース予算:¥8,500、お通し代¥500(税別)
*2018年2月15日発売「週刊新潮」7号掲載

人気焼肉店の店主が仕掛ける
活け渡り蟹料理専門店
ケジャンとは、活けワタリガニを丸ごと塩辛にした韓国料理。西麻布に昨年11月に開業した「ケジャン★オールスターズ」は、ケジャンをはじめとする活けワタリガニ料理の専門店だ。
店主の鄭壽福(ディ スボク)氏(54)は、新大久保の知る人ぞ知る焼肉店「ホルモン船ホールちゃん」を成功させた人物。2号店となるこちらは、ワタリガニの魅力を広めるために始めたという。
「韓国では近ごろワタリガニがあまり獲れなくなり、価格が上がっています。一方、日本人は韓国に旅行に行けばケジャンを好んで食べますが、国内での需要は少ない。そのため日本では安く活けワタリガニが手に入るので、これを活かさぬ手はないと思ったんです」
古いビルの外階段を上り、2階の扉を開けると、店内はカウンター10席の小体な造り。コースは8500円(税別)の1種類で、旬のおまかせ料理が約9品。トップバッターの韓国直送の塩辛2種は、濃厚な牡蠣の塩辛とタラの内臓の塩辛“チャンジャ”だ。続いて椎茸に似た肉厚なイタリア産マッシュルームの炭火焼き、香ばしく焼かれた「季節のチヂミ」、上質な和牛の炭火焼きを楽しむと、いよいよお待ちかねのケジャンの出番だ。ケジャンは醤油ベースのタレに漬けた「カンジャンケジャン」と、唐辛子入りの薬味ダレに漬けた「ヤンニョムケジャン」の2種類。これが順番に出されるのだが、その前に
「これを使って」
と差し出されるのが、ビニール製の指袋。手が汚れないように親指と人差し指にはめてカンジャンケジャンを殻ごと摑むと、なかなか重く、ずっしりしている。
「ウチで使っているのは愛知、愛媛、佐渡産の、1杯400〜500㌘の雌。もっと大きいものも届きますが、大きいと殻が硬くてケジャンに向かないんです」
殻ごと噛めばワタリガニの香りが弾け、醤油ダレが染みた身の旨み、とろりと甘い蟹味噌と相まって食欲をかき立てる。
ヤンニョムケジャンの方は、唐辛子が利いたタレがスパイシーで、ワタリガニの旨みと辛味のハーモニーが秀逸。本場のケジャンを彷彿させる味わいだが、韓国と同じレシピではうまくできないため、鄭氏はかなり試行錯誤したとか。
「海はひとつですが、ワタリガニは獲れる場所によって味が違うので、工夫が必要。日本産のワタリガニは一度凍らせてから味を染み込ませるようにし、タレには島根県産の醤油やシジミ醤油、山椒など、日本産の材料を使っています」
食事の定番は、蟹味噌やカンジャンのタレを混ぜたご飯をワタリガニの甲羅に詰めて炭で炙り、ウニとイクラをたっぷりのせた「ケジャンチャーハン」。〆に濃厚な「蟹スープ」を飲み干せば、まさに至福だ。
「ワタリガニの美味しさをもっと日本全国に広めたい」
と意気込む鄭氏は、築地に2㌧のワタリガニを保管。ブームへの備えは万端だ。

©MEGUMI KOMATSU
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