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新世界菜館(神保町)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年7月20日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月23日

東京都千代田区神田神保町2-2 新世界ビル ☎03-3261-4957

営業時間11:00〜22:00LO(日・祝20:00LO) 無休 

予算:昼¥1,000〜、夜¥5,000〜(税別) 個室・予約席のみサービス料別

http://www.sinsekai.com

*2017年10月4日発売「週刊新潮」39号掲載



上海の厳選漁場から直送される

上海蟹の〆は名物の中華カレーで


 中国料理の秋の味覚、上海蟹。都内で出され始める時期は、雌は10月、雄は11月が一般的だが、どちらもいち早く9月中旬から提供する店がある。今年で創業71年目を迎える、神保町は靖国通り沿いの老舗「新世界菜館」だ。

「中国では雄も雌も9月から出回りますが、暑い時期は上海蟹の体力がないため、日本に空輸しても生きている期間がわずかです。上海蟹を生かすために大切なのは温度調整ですが、当店は系列の通商会社が週に2回空輸するものを最適な温度で生かしているため、9月から雄雌共に提供可能です」

 そう説明するのは、3代目の傅永興(ふうえいしん)社長(65)。40年前に現会長の兄と上海の漁場を訪ね、直接取引の契約を結んだという。

 豊富なメニューの中には上海蟹の料理が7種類あり、看板は「姿蒸し」。価格はサイズによって異なり、「中」は1杯3500円〜、雌雄の食べ比べは6000円(共に税別、以下同)。注文すれば、スタッフがザルに乗せた活け上海蟹を席に運び、見せてくれる。

「みその量には個体差がありますので、グループでお越しのお客様には自分の好みの上海蟹を選んでいただき、名札を付けて蒸すサービスも行なっています」

 自分が選んだ上海蟹のみそが多いか少ないかは、殻を開けてからのお楽しみだ。

 蒸し上がるのを待ちながら楽しみたいのは、上海蟹のみそを生かした料理。有名なのは「上海蟹みそとフカヒレのスープ」(1人前1800円)だが、「黄芯白菜の上海蟹みそあんかけ」(約3〜4人前2200円)もフカヒレ入りだ。短冊状の白菜にかけられたあんは、上海蟹のみそと内子、フカヒレが入った贅沢な味わい。

「雄はみそが濃厚で、雌は内子を持っています。当店は雄と雌のみそをブレンドして使っています」

 その豊かな風味を堪能し終えると、蒸したての雄雌の「姿蒸し」が蒸籠で登場。茜色の甲羅に紐が十文字にかけられているのは、爪のハサミが危ないだけでなく、蟹が暴れて体力を消耗するのを防ぐためだとか。

 甲羅の中には鮮やかなオレンジ色の甘いみそがたっぷり詰まり、比較すると雄はこってり、雌はさっぱり。殻からほじり出した脚の身にそのみそを絡めたり、身にショウガ入りの甘酢ダレを付けて味わっていると、すぐに時間が経ってしまう。しかし、ここの上海蟹は冷めても特有の臭いが出ず、後味が爽やかだ。

「冷めた時の臭いは、上海蟹が育った湖の水の臭いだと思います。当店の上海蟹は水質の良い石臼湖(せきしゅうこ)や、太湖(たいこ)の清浄流域で天然畜養したものですので、水の臭いが気にならないのでしょう」

 蟹は漢方で体を冷やす食べ物とされるが、最後に名物の「中華風カレーライス」(900円)で〆れば冷え対策も万全。中華スープと和豚もちぶたの旨みが生きたカレーは、身も心も温まる味わいだ。


©MEGUMI KOMATSU

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