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サン・ル・スー(荻窪)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年7月20日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月23日

東京都杉並区西荻南3-17-4 第2篠ビル2F   ☎03-3247-1408

営業時間 12:00〜13:30LO、18:00〜21:00LO  

定休日:月曜、第2・第4火曜 

予算:昼¥2,500〜、夜¥4,000〜(共に税別) ディナーはサービス料別 

*2017年10月12日発売「週刊新潮」40号掲載


流行り廃りのないフランス料理を

作り続けて22年の本格ビストロ


 料理は時代と共に変化する。しかし、昔から変わらぬ料理を出す店もある。

「今流行りの料理とは違いますが、何を食べたか印象に残る料理が好きなんです」

 そう言って1990年代のフランス料理を作り続けるのは、西荻窪は平和通り沿いの「ビストロサン・ル・スー」のオーナーシェフ、金子淑光氏(58)。店名は直訳すると「ビストロ一文無し」という意味で、シェフいわく、

「フランスで修業を終えた後マダムと一緒に3カ月ほど食べ歩きの旅を続けて、帰国時に“サン・ル・スー”(一文無し)だったから」

 というのが命名理由。 

 メニューを開けば、料理のコースは3種類。基本の4500円(税別)のコースは、前菜、メイン、デザートを豊富なメニューの中から1品ずつ選ぶ仕組みだ。選択できる料理の品書きは、前菜19品、メイン16品、デザート12品と、目を見張るほど豊富。

 中でも最も初期から作り続けられている前菜が、「アジの燻製のマリネ温かいじゃがいもと香草添え」だ。隠し味のオリーブのほろ苦さが利いている以外はメニュー名が示す通りで、ふっくらしたアジの旨みと茹でたてのジャガイモの素朴な味わいは、食べ飽きることがない組み合わせ。シェフが現地のビストロでしょっちゅう食べていた料理を再現したものだとか。

「向こうではニシンを使っていましたが、日本ではニシンの仕入れが安定しないため、アジを使っています。三崎港で水揚げされた鮮度のいいアジでないと臭みが出てしまうんですよ」

 素材を重視するシェフは、肉や野菜も国産のものを中心に厳選。「つなんポーク」もお薦めだ。

「修業時代からお付き合いのあるお肉屋さんから、その人の地元の新潟県津南町の銘柄豚として紹介されまして。肉質がしっとり、ねっとりしているので、16年前からずっと使っています」

 その「つなんポーク」のバラ肉をラードの中で弱火でじっくり煮て焼き上げたメインは、表面は適度に香ばしく、しっとりした肉の旨みと、とろけるような脂の甘みのバランスが絶妙。肉の上に盛られた様々な野菜や、下に敷かれたレンズ豆にも肉の旨みが染みている。豚とレンズ豆は本場の定番の組み合わせゆえ年間を通して変わらないが、野菜はその都度変わり、現在はモロッコインゲンや小松菜、姫ニンジンなど。野菜の味が濃いのは、金子夫妻が軽井沢に買い出しに行き、農家の直売所で購入しているものだからだとか。

 デザートで見逃せないのは、例年10・11月に登場する「栗のプティポ」。プティポ、すなわち「小さな壺」状の器に、和栗のプリン、バニラ煮、アイスクリームのスープ仕立てなどが盛られた、秋の甘味の宝石箱だ。

「皆様が楽しみにして下さるので、頑張って栗の殻を剥いています(笑)」

 朗らかなマダムの接客に和みつつ、懐かしのビストロ料理を満喫したい。


©MEGUMI KOMATSU

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