ジ・イノセントカーベリー(西麻布)
- 小松めぐみ
- 2018年5月18日
- 読了時間: 2分
更新日:2018年8月25日
東京都港区西麻布1-4-28 カルハ西麻布101 ☎︎03-5311-2911
営業時間17:00〜24:00 不定休 http://www.innocent-carvery.jp
*2016年「週刊新潮」12号掲載

ショーウィンドウにずらりと並ぶ牛肉の塊は、圧巻だ。それぞれにプレートが添えられ、「松坂牛」「神戸牛」「近江牛」「仙台牛」といった、希少な和牛の銘柄ばかりが書かれている。
2015年12月にオープンした東京・西麻布の「ジ・イノセントカーベリー」は、5銘柄以上の和牛を扱う肉屋併設の焼肉レストラン。入口で銘柄と部位を選ぶと、好みの厚さに切って出してくれるスタイルが新しい。
「都心で松坂牛や神戸牛を味わうとなると、最低でも1人2万円はかかります。日本人でも和牛を食べたことのない人が増えているので、もっと気軽に和牛を楽しもうというのが、この店のコンセプト」
こう語るシェフの岡田賢一郎氏(51)は、創作料店「ちゃんと」や「Ken’s Dining」「銀座橙家」などを手掛けてきた、業界では名の知れた料理人だ。
「30代で独立して色々な創作料理の店をやってきましたが、もともと20代の頃は大阪の焼肉屋で働いていたんですよ。50代になった今、縁あって焼肉の世界に戻ってくると、牛の命をいただく有り難みをしみじみと感じますね」
その思いを込め、今回は5種・200㌘を楽しめる1万円の「和牛テイスティングコース」を注文した。
先ずは、創作センスが溢れる3品。とろけるように柔らかな「和牛スジの煮込み」と、フランスパンの上にのった「和牛の都会風パテ」、裏名物の「キムチの王様」だ。
「パテはフォアグラをつなぎに、尾崎牛のもも肉と背脂を使い、70度の低温で真空調理にしています」
なるほど、新鮮な肉のなまめかしい香りが、ユッケを連想させる。
「『キムチの王様』は、私が大坂の焼肉屋に勤めていた25歳の時に考案した料理。タイ、マグロ、貝柱、タコの刺身などをキムチで包み、球体状にしました。新しい料理を生み出すことは、僕にとってこの上ない幸せなんですよ」
続いて、焼肉の番がやってきた。和牛は「松坂牛サーロイン」「神戸牛サーロイン」「尾崎牛モモ肉」など5種だが、何故か松坂牛と神戸牛は、同じサーロインでも厚さが違う。
「どちらも霜降りですが、松坂牛の魅力は脂で、神戸牛の方はしっかりとした赤身の旨み。それで、松坂牛は焼いた時に脂が落ちてしまわないよう、厚めの1.5㌢に切り、神戸牛の方は1㌢程にしています。優劣をつけるというより、違いを楽しんで下さい」
松坂牛は噛まなくても口内の熱で脂が溶け続け、まるで肉の繊維を感じさせない柔らかさだ。一方、神戸牛は少し噛み応えがあり、赤身の旨みが濃厚である。
さらに、同じ和牛でもモモの尾崎牛は、赤身ゆえにかなりさっぱり。比べてこそ分かる和牛の銘柄の違いを、堪能した。
©MEGUMI KOMATSU
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