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チャイナルーム(六本木)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年3月22日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月23日

東京都港区六本木6-10-3 グランド ハイアット 東京 6F(六本木ヒルズ)

☎︎03-4333-8785   営業時間11:30~14:30(土日祝 ~15:00)、18:00~21:30   無休

https://www.tokyo.grand.hyatt.co.jp/restaurants/chinaroom-restaurant/

*2015年「週刊新潮」5号掲載



香港発の新たな高級魚

「コニッシュジャック」を堪能


「必要は発明の母である」という格言は、料理の世界でも通じる。

 フカヒレの乱獲防止が国際世論の主導権を握るにつれて、料理の提供を自粛する動きが欧米を中心に広がっている。東京・六本木の外資系ホテル「グランド ハイアット 東京」の中国料理店「チャイナルーム」も例外ではない。

 中里卓(なかざと たかし)料理長は、次のように語る。

「これまでは『六本木でフカヒレを食べるならウチに』と謳っていたので、フカヒレに代わる魅力的なメニューを必死で考え、1年前に誕生したのが『コニッシュジャックの煮込み』です」

 この魚はアフリカ原産の白身魚で、身の部分は欧米でフィッシュアンドチップスに使われている。

「そのヒレを掃除し、フカヒレの代替品として開発したのが、香港の食材業者です。フカヒレもコニッシュジャックも、それ自体に味はなく、両者の違いは歯ごたえと、味の吸収力。葱や生姜などで臭みを取り、形を壊さないように温度管理をしながら煮込むことで、食感を近づけています」

 取材日に注文したのは、全7品から成る1万2000円のコース。1品目は、中国4大料理の北京、上海、広東、四川をすべて網羅した前菜の盛り合わせで、クラゲや叉焼が登場した。

そして2品目が、「コニッシュジャックと福建鮑の姿煮込み宮廷式コラーゲン入りブラウンソース」。フカヒレと寸分違わぬ見た目だが、味はどうか。 

 口当たりはなめらか。それでいて、フカヒレ同様のプリッとした歯ごたえがある。これに仰々しい名を冠したソースの旨みがよく染みて、絶品である。

「このソースは、中国の歴代皇帝も食したと言われる門外不出レシピで作ったもの。その秘伝のレシピを紐解いて再現しております。

 その「秘伝」を少しだけ明かすと、

「素材の8割はアヒルで、金華豚、豚スネ肉、干し貝柱も使っています。火力全開で煮込むこと10時間。原価は普通のスープの10倍以上です。ちなみに牛肉の脂の融点は50度ですが、アヒルは14度。人間の体温よりも低いので、アヒルの脂は摂取しても体温で溶け、脂肪として体にたまることなく排出される。一方で、アヒルはコラーゲンが豊富なんですよ」

中里氏の料理の1つのテーマは、食で体を健康に保とうという「医食同源」の考え方。それは、続く「飲茶三種盛り」、「海老の2種ソース炒め」、「牛ヒレと長寿豚の黒酢炒め」、「蓮の葉おこわ」を経た、デザートの杏仁豆腐にも活きる。

「杏仁豆腐は、鎮咳作用、潤腸作用の効果があるといわれている漢方の杏子の仁(種)を丁寧に擦ったもの。さらに、旬のフルーツソースに含まれるビタミンCがスープなどのコラーゲンの吸収を促してくれるんです。中国料理は脂っこいと思われがちですが、その根底には、中国に古くから伝わる医食同源の考え方があるんですよ」

 現代の健啖家に朗報だ。


©MEGUMI KOMATSU

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