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ティエリー・マルクス(銀座)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年6月20日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月18日

東京都中央区銀座5-8-1 GINZA PLACE7F  ☎03-6264-5045

営業時間 11:30〜15:00、17:30〜22:00  定休日:日曜、年末年始

コース予算:ランチ¥15,000〜、ディナー¥20,000〜(税サ別)

https://www.thierrymarx.jp

*2016年「週刊新潮」49号掲載




親日家のフランス人大御所シェフの名物は

「もやしリゾット」


 銀座4丁目交差点のサッポロ銀座ビルが再開発により生まれ変わった「銀座プレイス」。7階にある「ティエリー・マルクス」は、ミシュランガイドでいくつもの星を獲得していることから”星の請負人"とも呼ばれる有名シェフ、ティエリー・マルクス氏(57)が監修するレストランだ。

 総料理長として采配を振るうのは、マルクス氏の右腕として長年パリで活躍した小泉敦子シェフ(38)。

「親日家のシェフが15年前に来日してフェアを行なった際に、頼み込んで弟子にしてもらったんです」

 と言って微笑む表情は柔らかいが、男性料理人を従えて皿に向かう姿は、気迫に満ちている。

 ディナーコースは8品2万円で、内容は月替わりだが、前菜2品とリゾットは定番とのこと。メニューには「貝/キャビア」のように食材の名前しか書かれていないため、実物に驚く。「貝」は紅色のホッキ貝で、「キャビア」は大皿の縁のサンドイッチの側面を蓋をするように盛られている。

「ホッキ貝の下にはアサリのエキス入り生姜ゼリー、隣にはチキンエキスの白いムースを添えています。すべての要素を少しずつ一緒にお楽しみください」。

 まず口の中で生姜とゼリーの酸味が出合い、生姜の甘酢漬けを思わせる味わいが生まれる。そこにホッキ貝の風味が重なると寿司屋のつまみを連想するが、瞬時にチキンエキスのムースの豊満な旨味が現れ、西洋の香りを漂わせる。続いてサンドイッチを食せば、キャビアの塩気と、具のチキンムースの油分を吸って伊達巻のような食感になった食パンのリッチな風味が相まって、フランス料理らしい凝縮感のある旨味が広がる。

「1+1が2以上に膨らむように計算された料理です」

 次の「フォアグラ/うなぎ」も然り。フォアグラとスモークした仏産鰻の力強い旨味と、鰻風味のクリームのまろやかな旨味。それらを青りんごの酸味が爽やかに引き締め、同時に供されるパン「ブリオッシュ」のバターの香りが洗練された余韻を残す。パン生地はパイのように空気を含んだ層状のため、バターたっぷりでも重たさは皆無だ。 「マルクス氏が料理人としてキャリアをスタートしたのは、パティスリー(洋菓子店)。ブリオッシュは氏が得意とする名物なのです」

 もうひとつの名物は、なんと「もやしリゾット」だ。

「お米の代わりに、米粒大に切ったもやしとセップ茸を使っています。パルメザンチーズの泡の下は、セップ茸のムースとスープです」

 チーズとキノコの芳醇な旨味に続き、粒状のもやしのシャキッとした食感が現れた。もやしがこんなに洗練された料理になるとは。

「実はマルクス氏は柔道5段、剣道4段の腕前。日本の武道から学んだ『相手と向き合う姿勢』は、料理人として食材に向き合う時にも意識しているそうです」

 東京に久しぶりに誕生した海外有名シェフの料理には、斬新な視点と食材への敬愛が満ちているのだった。

©MEGUMI KOMATSU

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