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トゥールダルジャン 東京(紀尾井町)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2019年7月21日
  • 読了時間: 3分

更新日:2019年8月16日

東京都千代田区紀尾井町4-1 ホテルニューオータニ東京

ザ・メインロビィ階 ☎︎03-3239-3111

定休日:月曜日 コース予算:¥18,000~(税サ別) 

https://www.newotani.co.jp/tokyo/restaurant/tour/

*2019年7月11日発売「週刊新潮」27号掲載



伝統を継承する凄腕シェフは

仏版人間国宝「M. O. F.」


 パリの本店は、1582年創業の鴨料理の名店。本店同様にフランスの貴族文化の香りを漂わせる東京店は、開業35周年を迎える今年、おめでたいニュースで華やいでいる。エグゼクティブシェフのルノー・オージエ氏(37)が、5月にM.O.F.(フランス国家最優秀職人章)を受章したのだ。

「M.O.F.とは日本の人間国宝に相当するもので、フランス文化を継承する高度な技術をもつ職人に与えられる称号です」

 晴れやかな笑顔で説明するクリスチャン・ボラー氏は、東京店を開業時から育てた日本代表総支配人。オージエ氏を本店から東京店に招いた伯楽でもある。

「当店はフランスと日本の架け橋として、本物のフランス料理をお届けする場所です。私が2013年にオージエ氏を東京に呼んだのは、彼の育った環境や経歴を鑑みて、彼こそフランス料理の伝統を伝えられる人物だと思ったためです」

 シェフの故郷はグルノーブル地方の小さな村。小学生の頃は放課後を祖母の営むレストランで過ごし、自ずと料理人を志すようになったという。その後錚々たる名店で修業を積み、来日。そんな彼の料理とパリ本店の名物を楽しめるのが、全5品のディナーコース(1万8000円、税サ別)だ。

 最初の前菜は、軽く火を通したツブ貝、マテ貝、ミル貝に、蕪のムースとキャビアを添えたもの。貝の風味やハーブの香り、蕪の甘みが穏やかなトーンで調和し、エレガントな味わいだ。

 2品目はフランス直輸入のフォアグラのテリーヌで、燕尾服姿のスタッフが途中でサーブするブリオッシュは、彼の地ではフォアグラと共に楽しむ定番の組み合わせ。伝統を重んじるシェフの心意気を感じつつ味わえば、なめらかな口どけとコクに至福を覚える。

次の魚料理はグルノーブル地方で「淡水魚の王様」と称されるオンブルシュヴァリエ、すなわちアルプス岩魚が主役。やさしく火を入れたその身は、なめらかな食感で、しっとりと脂ののった旨みが楽しめる。シェフいわく、バターとケッパーを使ったソースはグルノーブル地方でアルプス岩魚に合わせる定番だとか。

 メインの肉料理は、仏ビュルゴー家の鴨を使った名物「幼鴨のロースト」。「トゥールダルジャン」には様々な種類の鴨料理があるが、4種類の胡椒を使ったスパイシーかつクリーミーなソースで味わう“マルコポーロ”は、かつて昭和天皇も本店で召し上がった逸品だ。

 黒・白・ピンク・グリーンの胡椒を使う点は昔と同じだが、違うのは胡椒をテーブルで挽いてかけることと、鴨の身が分厚いこと。もちろん現在の方が胡椒の香りが立ち、肉の旨みもしっかり堪能できる。

「伝統は進化するもの。将来の伝統を作りたい」

 と語るシェフの料理は、今後も美味しく進化しそう。



©MEGUMI KOMATSU


次回は7月25日発売「週刊新潮」29号にて、「KOTARO HASEGAWA DOWN TOWN CUISINE」の記事をお届けします

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