モティーフ レストラン アンド バー(東京)
- 小松めぐみ
- 2018年6月5日
- 読了時間: 3分
更新日:2018年8月19日
東京都千代田区丸の内1-11-1 パシフィックセンチュリープレイス丸の内フォーシーズンズ丸の内東京7F ☎03-5222-5810
営業時間11:30〜13:30LO、17:30〜21:00LO(アラカルトは22:00〜) 無休
予算:ランチ4,860円〜、デイナー9,720円〜 http://motiftokyo.com
*2016年「週刊新潮」28号掲載

トウモロコシ、鮑、雪ムロ馬鈴薯──
北海道の自然を味わうホテルフレンチ
北海道新幹線も開通し、ますます身近になった北海道。とはいえ、それでも彼の地に渡る時間がないという方、東京にいながら、食で北海道を感じてみてはいかがだろうか。
東京駅に隣接する「フォーシーズンズホテル丸の内東京」のメインダイング「モティーフ」は、昨春より札幌の3ツ星フレンチ「モリエール」の中道博シェフ(64)がアドバイザーを務めているのだ。もちろん、札幌の味をそのまま再現しているわけではない。料理長の浅野裕之氏(41)は、
「札幌では可能な限り道産の食材を使っていますが、ここでは全国の食材を使っています。日本中のよいものが手に入るのが、東京の強みですから。たとえば1品目の『鮎』は和歌山から届く半天然ものです」
メニューに「鮎」とだけ書かれた1品目は、塩焼きかと思えば、一口サイズのお菓子のようなタルト。想像とのギャップが新鮮で楽しい。
「旬の鮎をペーストにしてタルトに詰め、上に鮎と相性のいい胡瓜のソースをかけたものです。ここでは『モリエール』の料理を再現したものと、この『鮎』のように私が考えた料理と、その“中間”があります」
“中間”に当たるのは、3品目の「トウキビ」と6品目の「鮑」。小さなコーヒーカップで出されるトウモロコシの冷製スープはクリームのように濃厚で甘く、茹で立てのトウモロコシのような香りがある。
「『モリエール』ではもっとたっぷりと盛りつけ、もぎたてのトウモロコシを茹でたものを添えるのですが、ウチでは全体のバランスを考え、少量にしています」
一方、「鮑」は蝦夷鮑を丸ごと1個使った迫力の盛りつけ。柔らかな弾力のある食感と旬の旨みを満喫すれば、至福である。大葉のソースや、付け合わせの「大葉とみょうがのリゾット」の爽やかな香りもいい。
「鮑は昆布を食べて育つので、昆布が豊富な北海道の海では美味しいものが育ちます。そんな蝦夷鮑を生かし、イカスミのソースとリゾットを添えて出すのが『モリエール』の定番ですが、私がイカスミを大葉にアレンジしたきっかけは、ホテルの婚礼の席で出すためでした。おめでたい席に黒と白の料理は向かないので、夏らしく大葉で緑にしたんです。お客様にはご好評をいただいています」
メインは北海道産の仔羊または牛肉の2択。どちらを選んでも付け合わせにはジャガイモのグラタンが付くのだが、これも実は『モリエール』の名物である。
「オーソドックスなフランスの家庭料理なのですが、このジャガイモは北海道の真狩の農家が雪ムロで半年熟成させたもの。雪の中で越冬させることで、ジャガイモの甘みが増すんです」
クリーミーで甘いジャガイモのグラタンは心温まるやさしい味わい。窓外に目をやれば、東京駅の線路の先に、北海道の大地が広がっているような錯覚がする。
©MEGUMI KOMATSU
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