ラシャッス(六本木)
- 小松めぐみ
- 2018年3月24日
- 読了時間: 3分
更新日:2018年8月23日
東京都港区六本木3-5-7 ☎︎03-3505-6144 営業時間18:00~22:00 LO
定休日:日曜、祝日(狩猟時期臨時休業あり) 予算:メイン1品(2名分)¥8,500 http://la-chasse.org
*2015年「週刊新潮」7号掲載

シェフが自ら狩りに出かけて獲る、
冬ならではのジビエ料理
六本木の喧噪から離れた静かな住宅街の坂の途中に佇む「ラシャッス」は、ジビエ好きに有名フレンチレストラン。オーナーシェフの依田誠志氏(50)はハンターでもあり、自ら狩りに出かけて仕留めたさまざまなジビエを料理して楽しませてくれるのだ。
鹿や猪の剥製が飾られた店内はシャンデリアとロウソクに照らされ、ヨーロッパの古城のような雰囲気。暖炉では本物の薪が燃え、山小屋のような趣もある。
「内装はかつてフランスで修業したレストランのある、ドルドーニュ県のドームという中世の街をイメージしたんです」と、依田シェフ。
席に着いて渡されたメニューはアラカルトで、前菜10品、「本日の肉料理」5品は、どれもジビエを使ったもの。よく見ると「佐賀嬉野で仕留めた仔イノシシ」を使った料理には、さまざまなものがある。選択に悩んだ末、「市場に流通しない頭とホホと舌を使った『テートフロマージュ』(3800円)は猟師じゃないと作れませんよ」というシェフの一言で、前菜はこれに決めた。
運ばれた皿には、パテのような円盤状のものが盛られている。説明によると、
「仔猪の頭を皮付きのまま3日以上かけてコトコト煮込み、肉を取り出してほぐして舌などをまぜ、煮詰めた猪のダシとハーブを合わせて冷やし固めたものです」
切って口に入れると、噛む前に液体のように溶け、濃厚な旨味と脂の甘味が広がる。それにしても、全く臭みがないのはなぜか?
「僕が30代の頃にフランスから輸入して使っていたジビエは、美味しくないどころか臭くて食べられないものが多かったのですが、それは仕留めた後の処理がきちんとできていないため。それで自分で狩りをするようになったんです。これはどんな動物にも共通することですが、肉を臭くしないためには少ない衝撃で仕留め、素早く腸を抜いて冷やすことが大事です。とくにキジや雷鳥などの『よく歩くトリ』は腸が太いため、被弾して内臓が破裂すると腸内の異物の匂いが全身にまわって臭くなり、腐食につながるんですよ」
次のメインに選んだのは、シェフが1月2日に千葉で愛犬と一緒に仕留めたキジの料理(1万2500円)。そぎ切りにしてブイヨンと白ワインで軽く煮込まれた胸肉はもちろん臭みがなく、淡白な旨味が溢れる。クリームソースの中に散らされたムカゴは「山でキジが好んで食べる」そうで、目を閉じて味わえば山の風景が浮かぶ。シェフに狩猟の秘訣を尋ねると、
「何よりも下調べが大事です」と教えてくれた。
「猟期は11月中旬から2月中旬ですが、どの山にどんな動物がいるか知るために、梅雨時以外は野山へ出かけています。開発等による地形の変化もありますしキジ猟は犬とアイコンタクトで行いますから、犬の訓練が重要です。今期は訓練の成果もあり、目標の10羽を上回る14羽を仕留められました」
とはいえ、野生の獲物は毎回仕留められるものではない。一期一会の思いで味わいたい。
©MEGUMI KOMATSU
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