ラルテ沢藤(表参道)
- 小松めぐみ
- 2018年3月7日
- 読了時間: 3分
東京都港区南青山3-4-12 ☎︎03-5775-4980
営業時間12:00~13:30、18:00~21:30 LO
予算:ランチ3,240円~(※前日までに要予約/平日は予約不要のランチ1,500円〜あり)、ディナー4,860円〜
http://larte-sawafuji.com
*2014年「週刊新潮」35号掲載
「新しい御馳走の発見は、人類の幸福にとって天体の発見以上のものである」
18世紀のフランスの食通の言霊の作用か、現代のフードライターは新しい御馳走を探して常に街を彷徨っている。その習性で青山の路地を彷徨していた際、半年前(2014年春)に開業したばかりというイタリア料理店を見つけた。店名のラルテとはイタリア語の「芸術」で、沢藤はオーナーシェフの名字。皿上で芸術が楽しめるレストランというわけだ。ディナーコースは5400円と7560円の2種類があり、後者のおまかせを注文した。
フランチャコルタ(スパークリングワイン)で乾杯すると、ほどなく一口サイズのシューアイスが運ばれた。中身はペコリーノチーズのアイスクリーム。そのコクとほのかな甘味が溶けて広がり、気持ちが昂ぶる。
1皿目は穏やかな甘味のあるキャベツのスープ。甘酸っぱいリンゴのゼリーとシナモン、ミントの香りでアクセントを付けたものだ。
2皿目の前菜は、フォワグラのクレームブリュレ、ヒラマサのカルパッチョ、美桜鶏でレバーとハツを巻いたもの(インボルティーニ)、冷製バーニャカウダの盛り合わせ。彩りの美しさが食欲をそそる。
グラスにはフランチャコルタが残っていたが、ソムリエに勧められるまま、白ワインをグラスでオーダー。フォアグラは合わせるワインを間違えると生臭みを感じる。そこへ行くと、貴腐菌の甘いニュアンスがあるワインが好適だが、セレクトされた「アルザス・ブラン」は見事な相性だ。
次のパスタは看板の「マルタリアーティ」。これは、シェフが4年半修業した北イタリアの定番である、不揃いな形のパスタ。これにサルシッチャ(ソーセージ)を白ワインで煮込んだラグー、シラスとフダンソウと白インゲン豆のフリッタータ(オムレツ)、シチリア料理でおなじみの松の実とレーズン、オレンジオイルが添えられている。フランスに近接した彼の地の料理の繊細さとシチリアの香りが同居し、独特のバランスで調和する。
次は一転、オーソドックスなポモドーロ(トマトソース)が登場。ただし麺は角が立った手打ちのキターラで、皿の端にトマトのジャム、バジリコのペースト、ンドゥイヤ(辛いソーセージ)の薬味が並ぶ。「トマトの香りが最初に出るので」とソムリエが選んだイタリア最北部の赤ワインとともに味わうと、ポモドーロが記念日にふさわしいご馳走となるから不思議だ。
魚料理はフランボワーズのジュレ、アメリカンチェリーとハーブを添えたカツオのコンフィ。肉料理は低温調理の豚フィレにウニ、山羊のフロマージュブラン、レモンの皮のジャム、カラメルソース、カラスミを添えたもの。ひと皿にさまざまな要素が詰まった料理は、「難解なアートを見て考えるのが好き」というシェフの嗜好が反映されている。
他方、これに呼応する熟練ソムリエ氏のセレクトも間然するところがない。小さくも華やかな“天体”の発見に快哉を叫んだ。
(2018年8月追記)
現在ディナーは4,860円〜
©MEGUMI KOMATSU
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