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リストランテ ラ・バリック(江戸川橋)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年4月11日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月23日

東京都文京区水道2-12-2  ☎︎03-3943-4928   営業時間11:30~12:30LO、18:00~21:45LO  定休日:水曜、第2火曜 予算:ランチ¥5,500〜、ディナー¥9,800〜

http://labarrique.jp   

*2015年「週刊新潮」29号掲載



隠れ家的な日本家屋で

本格イタリアンに舌鼓


 三島由紀夫の『美徳のよろめき』(新潮文庫)には、<女の友情は必ず共犯関係をひそめている>とある。では、男の友情はどうか。

 東京・江戸川橋のイタリアンレストラン「ラ・バリック」のオーナー兼ソムリエの坂田信一郎氏(44)と、シェフの伊藤延吉氏(39)から見えてくるのは、同志の“共闘関係”。

「20年程前に勤務先のレストランで伊藤に出会った時から、彼の手先の器用さや料理のセンスの良さに惹かれましてね。“将来、2人で店を出そう”と、彼を誘ったんですよ」

 そう坂田氏が振り返ると、伊藤シェフはこう言う。

「彼に声をかけられた時は嬉しかったですね。私もいずれは自分の店を持ちたかったので、“いいよ”と即答しました」

 その約束が果たされたのは、約10年後の2006年。北イタリアのトリノでソムリエの資格を取得した坂田氏が帰国し、この店を開業した。

「イタリアの良いレストランは、街中ではなく、他に何もないような場所にポツンとあるものです。扉を開けると、どこか懐かしく、ゆっくりした時間が流れている。そんな店を作りたくて、私が生まれ育った築70年の木造家屋をレストランに改装しました」

店内は、障子と塗り壁に囲まれた絨毯敷きのフロアにテーブルが並ぶ、和洋折衷のレトロな雰囲気。

 店内外のセラーには800銘柄のワインが貯蔵され、坂田氏が伊藤シェフの料理に合わせてワインを厳選する。嬉しいことに、グラスで少量ずつ出してもくれるという。

 注文したのは全10品の1万3500円のコース。2人の“共闘”が際立ったのは、3品目のふんわりトロリと焼いた「鴨のフォアグラの低温調理」。

「伊藤がフォアグラのソースに、定番のフルーツやバルサミコではなく、玉ねぎを使っているので、その自然な甘味を引き立てるために、個性的な白ワインを選びました」

 と、坂田氏が出してくれたのは、淡い琥珀色が珍しい白ワイン。色素の濃い品種を使っているそうで、熟成の過程で生じた花梨のような香りが漂ってくる。ソースもワインもカドのないやさしい味わいで、フォアグラの旨味を軽やかに引き立てる。

 5品目の「イカスミのリゾット」は、開店当初からの名物料理。サッと炙ったイカの切り身と生雲丹をのせた一皿だ。魚介には白ワインが定番だが、坂田氏は赤ワインを勧める。

「リゾットが濃厚なので、ピエモンテ産の熟成した赤ワイン『バルベーラ』を合わせました。ワインの中の鉄分を思わせる味が、イカのスミやワタと好相性なんです。ワインはあくまでも、伊藤の料理を引き立てるものでなければいけません」

 赤ワインと共にリゾットを味わえば、素朴で滋味深い旨味が染み渡る。

 店名の「ラ・バリック」は直訳すると「樽」という意味。熟成するワインのように、彼らの“共闘”は深まる一方である。



©MEGUMI KOMATSU

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