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下関 春帆楼 東京店 (永田町)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年5月1日
  • 読了時間: 2分

更新日:2018年8月23日

東京都千代田区平河町2-7-9 JA共済ビル内

Tel.03-5211-2941

営業時間11:30〜21:00LO

日曜・祝日定休

予算:昼¥3,240〜、夜¥14,580〜

https://www.shunpanro.com/location/tokyo/

*2016年「週刊新潮」4号掲載




 いわば「不遇」の時代にあった「河豚」に「福」が訪れたのは、明治21年のこと。豊臣秀吉が全国に布いた武士の「河豚食」禁止令が、解かれたのである。その前年に山口・下関を訪れた伊藤博文公が、ある店で食した河豚の美味に感嘆し、山口県下でのみ解禁したのだという。

 果たして博文公を唸らせたのは、「春帆楼」なる店であった。120余年を経た現在も、ふぐ料理公許第一号店の老舗として栄え、2012年には東京・平河町にも進出した。

「前々から東京出店を計画していたところ、偶然にも3年前、山口と縁のあるこの場所を見つけたのです」

 と、東京店支配人の小林雄二氏が振り返る。

「ここには以前、杉孫七郎という山口出身の官僚の屋敷が建っていました。明治から大正にかけて、当時の宮内省などに勤めた方で、優れた書家でもあった。それで、彼の雅号『聴雨』に因んだ『聴雨の間』という個室をつくり、永田町の先生方にもご好評いただいております」

 さて、料理を選ぼうと、メニューを見ると、「フグ」ではなく「フク」なる文字が並んでいる。

「フグは『不遇』につながるので、西日本では『福』にかけて『フク』と呼ぶんです。当店では、養殖フクのコースを3種類と天然フクのコースを1種類ご用意しております」

 今回は、養殖フクの一番下のコース(1万4580円)を注文した。

 先付、前菜8種盛りに続き、「フク薄造り」が運ばれた。有田焼の大皿の絵柄が透けて見えるほど、薄くひかれている。

「当店の養殖フクは、長崎県の新松浦漁協で1匹1㌔前後になるまで2〜3年飼育された後、無菌加工して直送されます。身の色は餌の影響を受けるので、白くするためにイワシやエビなどの魚介のすり身を与えているんですよ」

 さらに見事なのは、盛り付けだ。フクが白菊の花びらのように円を描き、身の先端が反っている。 

「フクの身の先端が立つように盛りつけるのが、板前の腕の見せどころ。フクはもともと身が固くて水分が多い魚なので、そのままでは先端が立ちません。当店では、秘伝の製法で一昼夜ねかせ、余分な水分を抜くことで、程よく引き締まった“活きのいい身”にしています」

2、3切れずつ箸で取って、自家製のポン酢につけると、噛むほどにフク独特のほのかな旨みや甘味が現れる。

 皿の縁には、3種の皮が添えられている。身に近い方の内側から「身皮」、「とうとうみ」、「皮」を湯引きしたもので、ゼラチン質のなめらかな食感とプリプリした歯応えが楽しい。

 これに「フクちり鍋」「フクの唐揚げ」と続き、最後に出汁のよく効いた「フク雑炊」で〆た頃には、まさに満腹ならぬ「満福」である。

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