乃木坂しん(乃木坂)
- 小松めぐみ
- 2018年6月3日
- 読了時間: 3分
更新日:2018年8月25日
東京都港区赤坂8-11-19 エクレール乃木坂1F ☎03-6721-0086
営業時間12:00〜13:30 LO、18:00〜21:30LO 不定休
予算:昼5,400円〜、夜1,6200円〜 https://www.nogi-s.com
*2016年「週刊新潮」25号掲載

2016年6月上旬、東京・乃木坂に開業したばかりだが、早くも評判の日本料理店。
ミシュラン2ツ星の「銀座小十」とフランスの系列店「奥田パリ」で要職を務めた二人、料理人の石田伸二氏(39)と支配人兼ソムリエの飛田泰秀氏(42)とがタッグを組んだ店である。
コースは1万6200円(7品)と2万1600円(10品)の2種類。夏の味覚、鮎が焼物として登場する後者を予約する。
数寄屋風の店内で案内されたカウンター席に座り、最初にハッとしたのは2品目の「冷やし鉢」。柔らかな冬瓜が舌の上で崩れると、冷たい出汁の澄んだ旨みが果肉から溢れ、淡い瓜の香りと相まって、脳内に涼しい微風が吹き抜けた。
3品目は、見事に咲いた牡丹のような鱧のお椀だ。
「故郷徳島県の鳴門の鱧のお椀です。鱧といえば明石が有名ですが、明石海峡を挟んで向かいの鳴門も、同じく良い漁場なんですよ」
淡白ながら独特の鱧の旨みと上品な出汁の風味を堪能すれば、初夏を味わう喜びが押し寄せてくる。
続いてお造りは3種類登場するが、中でも独創的なのが「メジマグロの藁焼きのヅケ」。表面には旨みが凝縮して藁の薫香があり、なめらかな断面にはメジマグロ特有の酸味と旨みがある。
「発想のヒントはカツオの藁焼きです。カツオは藁焼きにすると血なまぐささが旨みに変わりますが、メジマグロにはそれがないので、旨みを補うために焼いてからヅケにしました」
マグロを和芥子でいただくのも新感覚だ。
そして八寸の中には、待望の鮎の塩焼きが2尾。香ばしく焼かれた頭の旨みといい、ワタの苦味、淡白な身の瓜のような香りといい、これぞ鮎だと感動する。
「頭はサクッと唐揚げ、身は塩焼き、尻尾は干物をイメージしています。とはいえ、鮎に脂がのっていないと、頭は香ばしく焼けないんですよ。自らの脂で焼けないと。さらに大切なのは、鮮度です。天然の鮎は天候に左右されることがあるので、長野県の天竜川の水が引かれた養殖場で育つ鮎を活きた状態をいただいています」
7品目は、徳島の和牛「四国三郎」のA4モモ肉の炭火焼に酢橘ゼリー添えたもの。そして「翡翠ナスの白和え」を挟み、締めは天然鰻の炭火焼と土鍋ご飯だ。琵琶湖産の天然鰻は皮が厚く、身と皮の間の脂の味わいが絶妙。関西風に蒸さずに直焼きされた皮は、小気味よいほどパリパリだ。
「ひと目で分かりやすく、食べて美味しいと思えるものを出していきたい」
今後は、飛田氏から提案されるアイデアも取り入れ、意外性のある取り合わせや食材等にも挑戦していきたいという。
ちなみに店名は石田氏の名前の一字である“伸”を平仮名にしたものだが、他の「しん」の意味も意識していきたいからだという。
いかに芯を貫き、進化するか。興味津々。
©MEGUMI KOMATSU
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