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割烹 たか野(六本木)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年6月15日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月18日

東京都港区六本木4-4-3 六本木協和ビル西館1F   ☎03-3401-3537

営業時間 18:00〜22:30LO    定休日:日曜、祝日 コース予算:¥6,000(税別)〜

*2016年「週刊新潮」43号掲載



フグのひれ酒とともに味わう

フグの煮こごり、刺身とおばんざい


 六本木の路地裏で今年開業20年を迎える、おばんざいと京料理の店。暖簾をくぐると、かつて名店「津やま」で立板として活躍したご主人の高野善久氏(60)の笑顔に迎えられ、カウンターの上にずらりと並んだ料理に食欲がそそられる。

 メニューにはアラカルトの値段は書かれていないが、おばんざいは1品500ほどで、コースは6000円から1万円(共に税別)までの3種類。11月の花形食材はふぐだ。

「コースは季節料理3〜4品の間におばんざい5〜6品を挟んでお出しし、価格に応じて刺身、焼物、揚げ物の食材をグレードアップさせています。ふぐもおばんざいも召し上がるなら、コースがお得ですよ」

 とご主人に勧められ、ふぐ刺しが含まれる8000円のコースと、秋冬に人気のヒレ酒を注文。付き出しのフグの煮こごりは箸を押し返すような弾力があるが、口中で儚く溶け、それと同時に柔らかなフグの皮の細切りが現れる。焼いたヒレに熱燗を注いで作ってもらうヒレ酒は、雑味がなく旨みだけが溶け出て、煮こごりと抜群の相性。

「煮こごりはフグの皮のゼラチンだけで固めています。ゼラチンを使うと味が薄くなってしまうのでね。ヒレ酒のヒレも自分で血抜きして、ぬめりや臭みを取ってから干しているんですよ」

 フグのヒレは、市販品だと血抜きできていないものも多いのだとか。

 高野氏の完璧主義は、料理全般に徹底され、例えばおばんざいの「金平」は、見事に切り揃えられた細切りの根菜の食感と香りが絶妙。金平牛蒡は高野氏の出身店「津やま」の名物としても知られるが、

「私の作り方は8割が蓮根で、残り2割が牛蒡と人参。蓮根で歯触りをよくし、牛蒡で香りを出しています。おばんざいの中で『津やま』譲りの味は『生たらこの煮物』だけですね」

 薄味の出汁を煮含ませた「生たらこ」に続いて登場したのは、「ふぐ刺し」。やや厚めに引かれた刺身は直径約18㌢の皿を覆い尽くすようにたっぷりと盛られ、ほのかな甘味のある旨みが、噛むほどに広がる。

「このフグは半養殖のトップレベル。天然物の身は甘さよりも硬さが勝るので薄く引きますが、養殖は柔らかいので厚く引きます」

 銀座の高級店なら刺身までで8000円と言われそうだが、ご主人はこの後も「ヤナギムシガレイの若狭焼き」や、秋の定番「和風コロッケ」、〆には胡麻だれが香り高い名物「鯛茶漬」を出してくれる。しかも「茄子とニシンの煮物」などのおばんざいは、お腹に余裕があれば何種類でもどうぞと勧める気前のよさ。板前を雇っていない分、人件費を食材に回せるのだとか。

「食材も注文して届けてもらうのではなく、毎日自分で地元と築地を歩いて、担いで運んでいます。なるべくお客様に負担をかけずに、季節の食材を食べてもらいたいので」

11月下旬からは1万円のコースにフグも香箱蟹も登場し、「たか野」のベストシーズンが始まる。


©MEGUMI KOMATSU

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