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割烹 中嶋(銀座)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年3月19日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月23日

東京都中央区銀座6-9-13  

☎︎03-3571-2600    営業時間17:00~22:00(最終入店20:00) 

定休日:日曜、祝日 http://www.ginza-nakajima.com

コース予算:¥12,000〜(税サ別) *2015年「週刊新潮」1号掲載



魯山人の薫陶を三代受け継ぐ

銀座の割烹


 東京・銀座6丁目のすずらん通りに佇む「割烹 中嶋」は、稀代の美食家・北大路魯山人の薫陶を受け継ぐ創業昭和6年の老舗。魯山人が赤坂に開いた料亭「星岡茶寮」の初代料理長を勤めた中島貞治郎氏が、独立して立ち上げた店である。

「祖父は築地の『錦水』という料理屋で煮方をしていた際、『星岡茶寮』を開こうとしていた魯山人に引き抜かれました」

 そう語るのは、貞治郎氏の孫に当たる、3代目当主の貞彦氏(53)。

「魯山人は修業の厳しさを飛行機に喩えて、祖父にこう言って聞かせていたそうです。『飛行機は離陸するまでの準備こそ大変だが、それさえ終われば、あとは飛ぶだけだ。同じように、私のもとで厳しい修業を積みさえすれば、独立しても必ず成功する』と。その後、祖父が『星岡茶寮』よりも手頃な価格で料理を出したいと、独立した際、魯山人は自ら店名を彫った扁額を贈ってくれたんですよ」

 その扁額は現在も店内奥の壁に大切に掲げられ、客人を迎えている。

「魯山人もよくこの店に来て指南をしてくれたのですが、さすがに祖父も緊張したのでしょう。店中の空気がピリピリしていたそうです。祖父は祖父で、魯山人を生き写しにしたかのような厳しい人で、父は『厨房では(笑って)歯を見せるな』と、教えられたと言います。料理は真剣勝負でなければいけませんからね」

 さて、こうして三代にわたって受け継がれてきた「割烹中嶋」では、素材を活かすという魯山人の教えを何よりも大切にしている。

 取材当日に注文したのは1万2000円のコースで、前菜、御椀、刺身、焼物、煮物、変り鉢、食事、水菓子の合計8品。

 たとえば、前菜のひとつである「大ナマコとアンキモの酢の物、芹と菊花」は、番茶で湯通しして臭みを取ったナマコ独特のコリッとした歯ごたえを活かしつつも、驚くほど柔らかく仕上げられている。

 また、刺身のクエは島根産、スミイカは鹿児島・出水(いずみ)産。その甘味や旨みを引き出すため、クエには塩をあて、スミイカには飾り包丁が入れられていた。

「美味しさの主要素は素材から出る旨みにあるので、よい素材を選び、その素材の旨みを壊さずに引き出すことが大事です。よくない素材の味は直せません」

もちろん、器も見逃せない。魯山人にとっての料理とは、様々な感覚を動員して「美」と「味」の調和を楽しむものだからだ。

「竹糸昆布を巻いた白身魚のヤガラと平茸、青菜の吸い物は、黒地に赤漆で桐を描いた椀を使っています。これは、『ピンからキリまで』のキリに桐をかけて、一年のキリである12月にだけ、お出ししているんですよ。祖父から受け継ぐ器と料理の取り合わせも、当店の特徴でしょうね」

 魯山人自らが作陶した器を用いる3万円のコースでは、代表作の鯰向附も登場するという。

 魯山人イズムを目でも舌でも味わえる、贅沢なひと時を──。



©MEGUMI KOMATSU

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