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割烹一楓(代々木上原)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年7月19日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月23日

東京都渋谷区上原1-32-5 ロイヤルテラス101   ☎03-5738-8441

営業時間17:00〜24:30LO  

定休日:月曜 

コース予算:¥5,500〜(税別)

*2017年8月31日発売「週刊新潮」34号掲載


「和牛の最中」などの独創的な料理と

鮨種レベルの魚介が好評の人気割烹


「楓(かえで)の花言葉は『大切な思い出』。2年前の夏に開業した際、そんな思い出を作れるような店になりたいという思いを込めて、店名に楓という字を使いました」

 と語る店主の岩崎憲治氏(33)は、故郷石川県の旅館で料理の世界に入り、19歳から都内の様々な日本料理店で修業した料理人。旬の素材をモダンなセンスで生かした日本料理だ。

 月替わりの12品から成る「旬のおまかせコース」(8000円、税別)の8月の先付は、枝豆のすり流し。中央にとろりとした焼き茄子を置き、その上に和牛の炙りをのせたもので、意外な素材の取り合わせの妙に心が躍る。

「先付や焼物は、魚だけ、肉だけで構成するのではなく、野菜も組み合わせるのが特徴です。こんな組み合わせもアリか、と思っていただけたら嬉しいです」

 続いて登場したお造りは、少し厚めのひと口大に切られた金目鯛やマグロ、アジ、皮目を炙ったサワラの盛り合わせ。どれも脂がのって濃厚な旨みがあるが、特にマグロは鮨種レベルだ。

「当店は同じ代々木上原にある『すし久遠』の姉妹店。魚の仕入れ先は同じです。たとえばイカであれば、胴身を鮨店で使い、ゲソをこちらの割烹でつまみに使ったりしているんですよ」

 魚への期待が募るが、3品目は名物の「和牛と野菜の白和え最中」。見た目は和菓子の最中そのもので、手掴みでかじれば、パリッとした皮の香ばしさに続いて和牛の旨み、野菜の白和えのさっぱりした味が現れる。

「お客様を驚かせたくて、試行錯誤の末に完成させました」

 そんな岩崎氏のエンターテインメント精神は以降も余すところなく発揮され、ありきたりの料理が出ることはない。

 たとえば5品目の小鉢「冷や汁そうめん」は、宮崎県の郷土料理“冷や汁”をアレンジしたもの。本場の郷土料理では焼いてほぐしたアジを味噌や胡麻を合わせて出汁で伸ばすが、岩崎氏はアジの代わりに鯛を使って旨みを上品に抑え、

口当たりのなめらかなそうめんとカマスの一味醤油炙りをのせて、都心の割烹らしく洗練させる。

 6品目は、鱧の天ぷらに梅風味の出汁をかけ、鱧子を散らした「鱧と鱧子と梅の揚げ出汁餡かけ」。料理としては独創的だが、味わえば鱧と梅という王道の組み合わせにホッとする一品だ。

 岩崎氏が立つ白木のカウンター11席は、30〜50代を中心とした客で常時盛況。全般的に新奇な趣向の料理が中高年にも好評なのは、陰で日本料理の基礎が守られているからだろう。

「私が最も影響を受けたのは7年間勤めたプリンスホテルです。色々な部署で経験を積み、日本料理を総合的に学ぶことができました」

 当時学んだ衛生管理も、役立っているとか。大切な思い出を作りたい日に、安心して出かけられる一軒だ。

©MEGUMI KOMATSU

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