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鮨 杉澤(銀座)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年8月9日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月23日

東京都中央区銀座6-3-15 昭和イーティングビル2F

☎03-6274-6566  FAX.03-6274-6585

営業時間 12:00〜14:00、17:00〜22:00LO   定休日:日曜日  

予算:昼¥3,000〜、夜¥15,000〜(税別)

*2018年5月9日発売「週刊新潮」18号掲載



さりげなくモダンなつまみと

クラシックな握りをおまかせで


 銀座は泰明小学校の近くの新築ビルに2018年4月1日に開業した「鮨 杉澤」。祝花の胡蝶蘭が並ぶ階段を上り、2階の暖簾をくぐると、店内は桧のカウンターの真新しさがまぶしいほど。全8席のL字型カウンターに立つ店主、杉澤敬吾氏(39)は、銀座の有名店『鮨青木』で17年間修業を積み、円満退職した鮨職人だ。

「いつか銀座に自分の店を持ちたいと思っていましたところ、『鮨 青木』の旦那のお力添えにより開業する運びとなり、仕入れ先も紹介していただきました。これからは野菜を積極的に取り入れるなどして自分の色を出していこうと考えていますが、今はスタート地点に立ったばかり。『鮨青木』で学んだことを守りながら、少しずつ個性を出していきたいと思います」

 かく言う杉澤氏の夜のコースは、つまみ5〜6品と握り8カン前後で2万円(税別)。概してつまみはモダン、握りはクラシックな傾向だが、つまみも一品目はクラシックだ。たとえば「子持ちヤリイカ」「煮蛤」「蛸の桜煮」は、いずれも定番であるだけに極上の素材を丁寧に生かしていることがひと口目で分かり、期待が高まる逸品。続く品々は、昆布〆の菜の花やウニなど4種類の食材と合わせて楽しむ「マコガレイの4種盛り」や、九州の郷土料理“ゴマサバ”にヒントを得て薬味と和えた「アジのタタキ」など、創意工夫が楽しい。

 そんなつまみの中でもひときわ印象的なのが、「海老真丈のお椀」。海老真丈はオーソドックスだが、澄んだ吸地は海老の香りと旨みに満ちている。

「この吸地は、芝海老の殻を乾煎りして酒と水を足し、それを漉して昆布と葱、塩を加えて作っています。当店は玉子焼やおぼろに芝海老の身を裏濾しして使うので、殻がたくさんある時はこうしてお椀に使います」

 つまみの部の最後に登場するのは、旬のホワイトアスパラガスにグリーンアスパラガスのソースをかけたもの。軽やかな味わいに舌と気分をリセットされつつ、

「野菜を取り入れたい」

 という杉澤氏の言葉を思い出させる一品である。

 コースの後半の握りには、マダイ、コハダ、スミイカなど、旬と定番のものが一通り登場。特筆すべきは、脂ののったマグロと、仄かな甘さと磯の香りが漂うトリ貝だ。杉澤氏いわく、

「マグロは銚子の120㌔のもの。今年の生トリ貝は当たり年です」

 鮨種と共にほどける酢飯は、やや硬めで、米自体の旨みも感じさせる。

「当店の酢飯は『鮨青木』譲りで、新潟産コシヒカリを白酢と砂糖で味付けしたもの。現在は作る店が少ない“黄身酢おぼろ”を挟んで握る車海老の握りも、修業先から受け継ぐ味です」

 黄身酢おぼろのコクと酸味が車海老の甘みを引き立てる握りは、懐かしくも洗練された味わいである。


©MEGUMI KOMATSU

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