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南方中華料理 南三(荒木町)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年8月12日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月22日

東京都新宿区荒木町10-14 伍番館ビル2F B  ☎03-5361-8638

営業時間: 18:00〜22:00LO

定休日:日曜日、祝日 

コース予算:¥5,000(税込) 

*2018年7月5日発売「週刊新潮」26号掲載 


中国南部や台南の珍味佳品を             月替わりのおまかせコースで

 東京・荒木町に2018年5月に誕生した「南方中華料理 南三(なんぽうちゅうかりょうり みなみ)」は、中国南部と台南の味が楽しめる店。店主の水岡孝和氏(36)は東京の様々な人気中華料理店に勤め、台湾の屋台料理学校でも学んだ敏腕だ。17席の店内で提供するのは、南と付く三つの地方──雲南、湖南、台南の味である。その心は、

「コースの内容に変化をつけるため。中国南部は食材に恵まれ、調味料のバリエーションも豊富なのです」

 8品5000円(税込)のおまかせコースの最初の品は、台湾の小皿料理をヒントにした前菜の盛り合わせ。「鯖のプーアール茶スモーク」や「マヨネーズとカラスミで和えた台湾緑竹」など8種の前菜には、甘・酸・辛・苦・鹹の五味が網羅され、ハーブの香りを生かした品もあって芸達者だ。

「ハーブを使うのは雲南料理の特徴です。ミントやバジルはよく使いますね」

 前菜ではそんなエキゾチシズムに触れる愉しみもあれば、おなじみの食材の新たな表情を発見する喜びもある。例えば「苦瓜とアヒルの卵の塩漬けの和え物」は、生の苦瓜のサクサクの食感が新鮮だ。塩気もほどよく、何とビールが進むことよ、とグラスを呷れば、視界に入るのは天井から下がる茶色い干し肉。その正体は「豚大腸の腸詰」や「羊のウイグルソーセージ」で、2品目に登場する定番だ。

「ウイグルは中国西北部ですが、このソーセージは彼の地の料理を台湾や西洋の技でアレンジしました。仕込んでおけばすぐに切って使えますから、便利なんですよ。羊の心臓の燻製干しは湖南省の料理です」

と、水岡氏。

 旨味溢れる加工肉の後に続くのは、台湾産オオタニワタリ*の炒め物。シダ科の植物の柔らかな葉に、自家製ベーコンと豆豉の旨味が染みた一品だ。

 4品目の「ポルチーニ茸と舞茸の春巻」はオイスターソースとバター、黒胡椒で味付けしたキノコの具が実に濃厚だが、5品目の「スズキの蒸し物」はあっさりした味わい。しかし上にのったパイナップルや豆麹には芳醇な旨味があり、スズキの旨味を引き立てる。

「パイナップルは塩、砂糖、豆麹と一緒に漬けたもので、台湾南部でよく使われる調味料です。淡白な魚や肉に合わせることが多いですね。一方、濃厚な赤身肉に合うのは沙茶醤。良い干物で作ると良い味が出るんですよ」

 舌平目の干物で作られた自家製沙茶醤は6品目の鹿と抜群の相性で、どこか懐かしい味わい。聞けば、日本の本枯節の粉とピーナッツの粉、ココナッツパウダーも使用しているとか。

「台湾料理は日本の影響で鰹節もよく使うんですよ」

 6品目はこうした穏やかな味わいの台湾料理の日もあれば、激辛の湖南料理の日もある。後者の場合は、〆の汁ビーフンの優しい旨味と、デザートのココナッツミルクの甘味が格別に染みる。


©MEGUMI KOMATSU


(2018年8月追記)

オオタニワタリは沖縄でも採れるシダ科の植物。

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