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唐井筒(銀座)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年3月18日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月25日

東京都中央区銀座7-6-19 ソワレド銀座弥生ビルB1   ☎︎03-3571-0755

営業時間11:30〜13:30、17:30〜22:00

定休日:土曜、日曜、祝日

予算:昼¥1150〜、夜/会席料理¥9300〜、スッポン1匹コース¥24,800(2〜3名)

http://karaizutsu.com

*2014年「週刊新潮」48号掲載


スッポンの刺身

島原産のスッポンを

丸ごと一匹食べつくす


 スッポンは昔から精力増強に効果があることで知られるが、豊富なゼラチン質は美容にも効果があり、最近は女性の間でも人気だ。

 一言でスッポンといっても、ピンからキリまで。輸入ものを使う安い店もあるが、国産のスッポンを手頃な値段で楽しませてくれる店といえば、東京・銀座の「唐井筒」である。長崎・島原産のスッポンを丸ごと1匹使った「スッポン一匹コース」は、2人で分ければ1人1万2400円、3人で分ければ1人8000円超と、同クラスの専門店に比べてリーズナブルだ。

「お客様の8割はスッポンが目当てで、丸ごと一匹コースは毎日注文がある人気メニューです。寒くなるとスッポンを食べに来るお客様が増えるので、年末は月に200匹ほど使うでしょうか。会席料理のコースもご用意していますが、お客様には『スッポン屋』だと言われています」

 屈託のない笑顔で話す松橋通友氏(41)は、開業時から20年間料理長として勤めてきた父・松橋辰男氏(77)の下で19年間修業を積み、3年前にオーナーから店を譲り受けて主人となった。店名の由来について尋ねると、

「前のオーナーの家紋がスッポンの甲羅に似ていることから、家紋の名前を店名にしたそうです。自分の代になっても何も変えていませんので、店名もそのままでやっています」

 ということからも分かるように、スッポン料理は開業時からの名物。そもそも前料理長の松橋辰男氏は、開業前から「島原洋鼈(しまばらようべつ)」と付き合いがあり、そのスッポンの質がよいことから、丸ごと1匹生かすコースを考案したという。

2名で取材に訪れた当日は、まず数の子の粕和えなどの前菜3点盛りと、牡蠣の味噌椀を楽しんだ後、スッポンを丸1匹分、卵酒、生き血、刺身、唐揚げ、鍋、雑炊で堪能した。

 梅酒に浸された銀杏大の卵は、イクラのような薄い皮をやぶると黄味のコクのある味が広がる。生き血は真っ赤でおどろおどろしいが、リンゴジュースで割っているため味は爽やかだ。

 大きな皿を埋め尽くすように盛られたスッポンの刺身は自慢の一品で、鮮紅色の赤身と黄色の脂身が半々ずつ盛られ、小指の爪ほどの心臓、湯通ししたレバー、腸も添えられる。土佐醤油やポン酢に薬味を落として味わうと、脂は湯葉刺しのようななめらかな食感で、ほのかな甘味が広がった。薄造りの赤身は淡白な旨味があり、鳥刺しに近い。

「活けのまま仕入れて朝締めていますので、刺身でご提供できるのです。赤身は100度以下のお湯にサッとくぐらせ、氷水でしめたもの。脂身は生のままです。脂は身につけたまま鍋に入れる店が多いですが、うちは鍋には脂を入れないので、前料理長が脂を刺身で出すことを考えたのです。そのため私どもの鍋のスープは脂がなく、スッキリした味わいが特徴です」

 和服の女性が取り分けてくれる鍋のスープは、スッポンの旨味にショウガの香りが利いた、澄んだ味わい。スープにたっぷり入ったエンペラは魚の縁側に相当するスッポン特有の部位で、ゼラチン質が豊富なため口中でなめらかに溶ける。

 翌日は肌がしっとり、師走の疲れも回復していた。


©MEGUMI KOMATSU

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