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多仁本(四谷三丁目)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年8月3日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月23日

東京都新宿区荒木町3-21 宮内ビル2F  

☎03-6380-5797

営業時間12:00〜14:30、18:00〜21:00最終入店 定休日:日曜日

予算:昼¥5,000・¥8,000(税別)、夜¥8,000・¥10,000・¥15,000(税サ別)

*2018年1月25日発売「週刊新潮」4号掲載



和食激戦区に誕生した、

茶懐石の流れを汲む気鋭の割烹


 新宿区荒木町は、和食の激戦区。古い飲食店が高齢化で相次ぎ閉店する一方、その跡地では若い料理人たちが独立の夢を叶え、鋭気をみなぎらせている。

 2017年4月に開業した「多仁本」は、茶懐石の流れを汲む料理が評判の一軒。主人の谷本征治氏(37)は高校卒業後、料理とは無縁の仕事に就いていたものの、趣味の茶道がきっかけで料理の世界に入ったのだとか。

「お茶の先生に誘われて訪れた滋賀の茶懐石の料亭で感銘を受け、その本店と支店で8年間修業させていただきました。本来の茶懐石は汁とご飯と向付から始まりますが、当店ではゆっくりお酒を楽しんでいただけるように流れをアレンジしています」

 荒木町が花街だった時代の面影を残す路地の突き当たりのビルの階段を上り、扉を開けると、店内はL字型のカウンターに8席のみ。

お客は50代が中心で、紹介客が多いものの、ご近所さんもやってくるという。

 月替わりのおまかせコースは3種類。1万円と1万5000円(共に税サ別、以下同)のコースは先付からスタートするが、8000円のコースは次の八寸から始まる。

「八寸は全コース共通ですが、8000円のコースの最初の品でもありますので、先付の役割を兼ねつつ、甘・辛・酸の味覚のバリエーションをつけ、華やかさを意識しています」

 1月の八寸は紅白柿なます、唐墨大根、海老芋の柚子味噌がけ、子持ち昆布の天ぷら、小鯛の笹漬け寿司など7種。そこはかとなくお正月の名残が漂い、おめでたい気分で日本酒が進む。

「あまりお正月を強調しないようにしましたが、お椀は特別。鴨のたたきよせの白味噌仕立てです」

 紅白の大根と人参の色合いや、上にあしらわれた金箔も晴れやかな風情。味わえば、お出汁の香りの良さに目が覚める。お出汁は昼と夜の2回、最初のお客様が到着する10分前を目安にひいていると聞けば、なるほど納得。

 続く3〜5品目は、明石の鯛のお造り、鰆の西京焼、牡蠣と大黒しめじと九条葱の小鍋仕立て。さっぱりと素材を生かした料理は、唐津焼や信楽焼などの器に盛られ、器が料理を引き立てる趣も目に味わい深い。

 旬の食材を満喫したところで、6品目は土鍋で炊きたての魚沼産コシヒカリ。まずは煮えばなのお米の甘みを味わい、次に別添えのシラスの山椒煮をかければ、お酒を飲んだ後でもご飯が止まらない。

 食後に甘く爽やかな「グレープフルーツとイチゴのゼリー」を味わえば、ゆったりと満たされた気分だ。甘味は茶懐石の醍醐味とあり、上のコースでは黒豆のお汁粉とお薄(抹茶)も用意されているとか。今後は

「料理の精度を高め、コースも絞っていきたい」

 と谷本氏。8000円で楽しめるのは今のうちかも。



©MEGUMI KOMATSU

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