天婦羅あら井(神楽坂)
- 小松めぐみ
- 2018年6月29日
- 読了時間: 3分
更新日:2018年8月25日
東京都新宿区神楽坂4-8 AGEビルB1F
☎03-3269-1441
営業時間17:30〜24:00(土曜日11:30〜21:30) 定休日:日曜、祝日
コース予算:昼¥3,000〜、夜¥10,000〜
要予約 ※平日21:00以降アラカルト可
http://tempura-arai.jp/
*2017年1月12日発売「週刊新潮」3号掲載

老舗天ぷら店の2代目が
新境地を開くセカンド店
レオナルド・ディカプリオなどのハリウッドスターも顧客に持つ神楽坂の「御座敷天婦羅天孝」は、昭和52年創業の老舗天ぷら店。名前の通り座敷で天ぷらを出すこちらはコース予算2万円とあり8割が接待利用だが、2代目の新井均氏(48)が2016年8月にオープンしたセカンド店「天婦羅あら井」の予算は、本店の半額。店内はカウンターのみ12席、コースはお通しとサラダ、天ぷら8種とかき揚げ、ごはんで1万円(税サ込)の1種類である。
「接待ではなくプライベートで使っていただける店を作りたいという思いと、若い世代のお客様にも来てほしいという思いから始めました。そのため本店よりコースの品数を減らし、食材のレベルを控え、価格を抑えています。たとえば海老は本店では甘味の強い才巻海老を使いますが、こちらでは巻海老です」
コースの最初の天ぷらとして登場する巻海老はなかなか甘みがあるが、才巻海老はもっと甘いのだろう……と想像していると、
「才巻海老の甘さは段違いです。私は通常そちらにおりますので、いつか本店の方にも是非どうぞ。小柱の海苔巻も名物なんですよ」
と2代目。
さて、こちらの揚げ手は都内の天婦羅店を経て、本店でも3年修業した荒井孝明氏(40)。百合根や安納芋など、テンポよく出される熱々の天ぷらはどれも衣がカラリと揚がり、素材の香りが閉じ込められている。
「高温で揚げて、食材の旨味を閉じ込める。それが天ぷらの醍醐味です。素材は生でも、揚げ過ぎてもいけません。油から取り上げるタイミングが肝要です」
というのが新井氏の教えだが、勘は経験によって養われるもの。しかし本店では若手が前に出る機会がないため、この店は若手を育てるために作ったという意味合いもあるとか。
「最高レベルの職人に育て上げるつもりです」
2代目の期待を受ける荒井料理長の天ぷらで印象的なのは「小肌の梅紫蘇巻」。天ぷらで小肌とは意外だが、フワリとして且つしっとりした小肌の旨味が梅や紫蘇の香りと相まり、クセになりそうな味だ。
「江戸前の伝統と格式を守る本店ではできないことですが、こちらでは小肌などの珍しい素材や肉類なども出し、天ぷらの可能性を探りたいと思っています」
一方、江戸前の天ぷらの花形素材である穴子はやや細めで、衣の油分と穴子の旨味のバランスがよく、さらりとした食べ応え。
「東京湾で捕れる穴子は大きくならないため皮と骨が柔らかいのですが、ウチで使うのは中でも小さな、1尾40g前後の“メソッコ”と呼ばれるもの。漁師さんが前の晩に海の中に仕掛けた筒の中に穴子をおびきよせる、昔ながらの“筒漁”で捕ったものなんですよ」
締めのかき揚げは、天茶や天丼でも楽しめるが、おすすめはばらしてごはんに混ぜる「天バラ」(追加料金1000円)。熱々のごはんに絡んだ衣の油脂の旨味も、天ぷらの魅力だと気付かせてくれる。


©MEGUMI KOMATSU
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