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天婦羅からさわ(西麻布)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年7月30日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月23日

東京都港区西麻布4-15-18 高木ビル1F  ☎03-6418-7878

営業時間11:30〜14:00LO、17:30〜21:30 LO   定休日:水曜日

コース予算:昼¥2,200〜、夜¥10,000〜(税サ別)

*2017年12月7日発売「週刊新潮」48号掲載

名門ホテル出身の店主が誇る

冬の花形食材は活け〆のフグ


 冬の味覚フグと、ベテランが揚げる江戸前の天ぷら。両者の魅力を同時に堪能できるのが、西麻布の路地に佇む「天婦羅からさわ」だ。

 コースは2種類あり、「粋」は季節の天ぷら12品に天丼又は天茶が付いて1万円(税サ別、以下同)。これに刺身が加わるコース「旬」は、時期や内容によって価格が変動するが、同店の冬の真骨頂はこちら。11月〜3月の間にこのコース(2万3000円)を注文すれば、フグの煮こごりなどの先付に続いて、直径18㌢程の皿に盛られたフグ刺しが登場し、のっけから至福へと誘われる。透明感のある身に凝縮された旨みや、箸が触れると弾けるようなとうとうみ(本皮)の食感など、フグ料理専門店も顔負けの味わいを楽しませてくれるのは、店主の唐澤隆氏(65)。かつてホテルオークラ東京の『和食・天ぷら山里』に勤めていた時代にふぐ調理師の免許を取ったという、日本料理のベテランである。

「フグは2㌔以上のものでないと弾力が出ませんので、その日の一番大きくていいものを築地で仕入れて活〆にしています。天ぷらも素材ありきの部分がありますから、築地に毎日足を運んで、仲買とのコミュニケーションを大切にしているんですよ。今日のは淡路島産の3㌔弱のトラフグです」

 12年前の開業時にフグを提供しようと思った理由は、

「フグを天ぷらと一緒に出す店が他になかったため」。

 一方、天ぷらに関しては、

「お客様が召し上がるスピードを計りながら、できたての最良の状態で味わってもらえるのが天ぷらの利点です。料理ができてから召し上がって頂くまでにタイムロスがあると、料理人として空しくなるんです」

 天ぷらは、ほのかな甘みを感じさせる鹿児島産車海老2本から始まり、北海道産天然ホタテ、銀杏、ウニの湯葉巻と、テンポよく登場。中でも印象的なのは、次のフグの天ぷらだ。薄い衣をまとった身は一見キスのようだが、食感はもっちりとして、クリアな旨みはフグならでは。大きな白子の天ぷらは、まさにとろける食感だ。

 野菜の天ぷらはいずれも食感が生きて香り豊かだが、味だけでなく、口上も心に残るのがアスパアラガス。

「穂先から召し上がるとちょうど良くなるように計算して揚げました」

 と言われて穂先から食せば、食べている間に余熱が根元まで入るように計算されている。

 後半では再び車海老が登場するが、それは天つゆを使ってほしいため。

「食材の味を生かすのは塩ですが、まったりと心が落ち着くのは天つゆです。自慢のお出汁を使った天つゆも、ぜひお楽しみ下さい」

 穴子やタマネギは、特に天つゆと抜群の相性だ。

 ホテル勤めの33年間に調理場の全部門を経験した唐澤氏。その総合力が燻し銀のように光る名店である。



©MEGUMI KOMATSU

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