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宮川町水簾(赤坂)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年8月6日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月23日

東京都港区赤坂9-7-1 東京ミッドタウン3F    ☎03-5413-1881

営業時間 11:00〜14:00LO、17:00〜22:00LO(日祝21:00LO) 無休

予算:昼¥2,808〜、夜¥10,584〜(税込)

http://www.kyoto-suiren.com

*2018年3月22日発売「週刊新潮」12号掲載



小さな器に魅力が凝縮された

独創的でモダンな京料理コース


 京都の鴨川の東側に位置する宮川町は、五花街のひとつ。その一角に本店を構える「宮川町水簾(みやがわちょうすいれん)」は、2012年の開業後、17年5月に大阪・北新地、同年8月には東京・赤坂にも進出した人気店だ。

 東京店の店内は、右手が12席のカウンターで、左手は個室が5室。カウンターの中には本店と同じく、竃(かまど)が設えられている。

「ウチのコースは、ご飯に照準を合わせています。お米は毎朝店内で精米し、あまり洗わずにおくどさん(竃)で炊くのですが、このご飯が主役です。その前には現代風にアレンジした京料理を、軽めのポーションでお出しします」

 京ことばを交えながら説明するのは、本店と2軒の支店を行き来する総料理長の島谷宗宏氏(45)。京都の料理旅館「嵐山辨慶」「貴船ひろや」で腕を磨いた島谷氏は、日本料理アカデミー主催の大会で優勝した経験も持つベテランだ。

 月替わりのコースは3種類で、10品構成の「おまかせ初め」は1万584円(税込)。3月の1品目「桜海老の玉締め」はいわゆる茶碗蒸しで、上に盛られた桜海老の素揚げの香りが食欲をそそる一品。食べ進めれば中から蓬麩(よもぎふ)も現れ、春の野の香りも楽しめる。

「2品目は旬の飯蛸の飯蒸しです。飯蛸は卵が米粒のように見えることから“飯蛸”と呼ばれますが、飯蛸の飯とかけて飯蒸しにしました。木の芽味噌を絡めてお召し上がりください」

 洒落っ気が利いた飯蒸しの器は、染付のお猪口。餅米の上には筍や白魚も盛られ、小さなお猪口の中は春爛漫の小宇宙だ。

 豊富な食材を小さな器に盛り込むスタイルは、6品目以降のお造り、八寸、小鍋にも顕著。例えばお造りは、アオリイカで巻いたホタルイカなど、計3皿を小ぶりな折敷に盛り合わせたもの。八寸はちらし寿司で、約5㌢四方の寿司桶の酢飯の上には穴子、イクラ、車海老など、丁寧に仕込まれた具材が9種載っている。8品目は直径約8㌢の特注の土鍋でグツグツ煮立つ「豚の角煮と新じゃが餡の小鍋白味噌仕立て」。濃厚な豚の角煮も白味噌仕立てとなると、はんなりした京風の表情だ。

「見た目はコンパクトですが、しっかり詰まっていますので、ボリュームはそこそこあるんですよ」

 島谷氏が言う通り、完食すれば腹八分目以上の満足感。そこへ登場する炊きたてのご飯は粒がふっくらと立ち、噛む程に優しい甘みが感じられ、お代わり必至である。

「炊きたてのご飯はよくありますが、精米したてはあまりないでしょう? これがその美味しさです」

 食後には手作りの甘味と、東京店限定の抹茶、ミニチュアサイズの生菓子が登場。脇役の精巧さと主役のシンプルさが、見事な好対照を成すのだった。





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