富麗華(麻布十番)
- 小松めぐみ
- 2018年4月20日
- 読了時間: 3分
更新日:2018年8月25日
東京都港区東麻布3-7-5
☎︎03-5561-7788
営業時間 11:30〜14:00、17:30〜22:00
無休 コース予算:ランチ¥2,500〜 ディナー¥8,640〜
http://www.chuugokuhanten.com/store/fureika.html
*2015年「週刊新潮」38号掲載

毎年9月25日に解禁
「上海蟹」に定評のある中国料理店
「日本で“女房を質に入れても食べたいもの”といえば春の初鰹ですが、中国では秋の上海蟹なんですよ」
東京・東麻布の中国料理店「富麗華」の支配人・小沼寿久氏(35)は、そう言って笑った。この日は9月25日。毎年、上海蟹のメニューが始まる記念日なのだ。
中国では「大闸蟹(ダージャーシエ)」と呼ばれて親しまれている上海蟹は、6月に脱皮し、水が冷たくなる9月下旬から身が締まり、風味が増す。それを蘇州近郊の名産地「陽澄湖」や「太湖」から年間20㌧も自社輸入しているのが、東京・六本木を拠点に全10軒の中国料理店を展開する「中国半飯店」グループ。
中でも「富麗華」は、メニューが30種類以上と、最も充実している。まずは中国でも定番の「上海蟹の紹興酒漬け」(半身2700円)と「上海蟹の蒸し物」(1ハイ5400円〜)を注文した。
前者は生きた上海蟹を紹興酒ダレに漬けて身をとろりとさせた珍味感覚の料理で、ウニのような色の柔らかな卵に濃厚なコクがある。
後者も王道の料理だが、身をほぐして提供するところが、この店の特徴だ。
「30年以上も前に、当時の社長のアイディアで、身をほぐして出すようになったんです」
と、小沼支配人。
「上海蟹は初代の社長が貿易業を営んでいた頃から商材として扱っていたのですが、高価なのに日持ちがせず、注文が少ないとロスが出てしまうため、40余年前に『中国飯店』を開業した頃は扱えませんでした。そこで、多くの人に注文して貰うために始めたのが、この提供スタイル」
客が身をほぐしている間に冷めると、臭いが出て、美味しさが半減してしまうからだという。
「スタッフがお客様の前で手早くほぐし、熱々の美味しい状態でお客様に召し上がっていただけるようにしたことで、今では全テーブルで注文が出るほどの看板料理になりました。そのため、期間中は厨房の30人のスタッフのうち5人が“上海蟹番”となり、ひたすら蟹の身をほぐすんですよ」
しばらくして、その「上海蟹の蒸し物」(写真)が、蒸したての身をほぐして甲羅に盛った状態で、黒いタレが添えられて登場した。
「タレは上海では100%黒酢ですが、それだと蟹の苦味が出てしまうので、当店では黒酢に醤油やショウガを加えています。まずは何もつけずに、素材の味をお楽しみください」
そのままでも風味豊かだが、タレをつければ味が引き締まり、二度美味しい。
続いて後半は、小沼支配人おすすめの「上海蟹みその炒め青菜添え」(小盆3294円)と「上海蟹みそ入りスープそば」(1674円)を注文した。青菜炒めは、蟹味噌の塩気と青菜のミネラル感のバランスが秀逸。麺は、蟹の存在感は控えめだが、トリ出汁と相まった蟹味噌の余韻がよい。
1月末までの期間中、再び訪れても飽きないほど、上海蟹のメニューはまだまだある。なるほど、「2日で飽きる」という女房を「質に入れても食べたい」と言われるわけだ。

©MEGUMI KOMATSU
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