尾崎幸隆(麻布十番)
- 小松めぐみ
- 2018年4月29日
- 読了時間: 2分
更新日:2018年8月23日
東京都港区麻布十番3-3-13 M2KステージⅢ B1 ☎︎050-3184-2627
営業時間17:00〜22:30LO 無休
予算:コース¥10,800 http://www.ozaki-yukitaka.com
*2015年「週刊新潮」48号掲載

築地の魚問屋が手掛ける
マグロと和牛が看板の割烹
マグロの頭の付け根あたり。「背トロ」と「脳天」の間にある「突先」は、1匹のマグロからごくわずかしか取れない希少部位である。脂と香りのバランスが良く、コラーゲンも豊富な「お宝」だけに、滅多にお目にかかれない。
が、東京・麻布十番の割烹「尾崎幸隆」では、定番の食材。築地のマグロ問屋「やま幸」の山口幸隆代表がオーナーだけあって、希少部位が入手できるのだという。
「当店では、マグロのシェアが国内一の『やま幸』から、国産の本マグロをブロックごとに仕入れており、頭ごと仕入れないと取れない『突先』など、様々な部位をご用意しています」
店主の越谷道治氏(41)がそう言って、1万800円のコースを始めてくれた。1品目の滋味溢れる「スッポンスープ」、2品目の「タラの白子の茶碗蒸し」に続いて、「マグロの突先の小丼」が登場した。一口サイズの小さな丼で、身の筋に沿って梳いた突先の口当たりは、とろけるように柔らかい。マグロ特有の爽やかな香りと濃い旨みを味わうと、早くも満足感が押し寄せる。
しかし、満足するのは、まだ早い。この店には更なる希少食材があるのだ。
「黒毛和牛の最高峰といわれる、宮崎県の『尾崎牛』です」
と、越谷料理長。
「長期飼育と少量生産が特徴で、なかなか手に入りません。サシは強いけれど、脂は軽い。というのも、脂の融点が低いため、毎日食べても体に負担がかからないんですよ」
確かに、4品目の「尾崎牛のタタキ」は、内モモの赤身の部位でありながらも、ほどよくサシが入り、噛むほどに旨みが溢れてサシが溶ける。
それにしても、なぜ「マグロ」と「和牛」にこだわるのか。
「この日本人の2大好物を楽しめる店こそ、山口オーナーが目指したものなんです。それで、尾崎牛を生産している尾崎宗春さんの姓と自分の名を合わせ、店名を『尾崎幸隆』としました」
うれしいのは、この「2大好物」の「鮨」と「ステーキ」までコースに入っていること。
「お造り」や「焼き物」などを挟んで9品目に登場したのは、2カンの「大間の本マグロの握り」。赤身は想像以上に濃厚で、中トロはシャリのほの温かさで脂が溶け、赤酢と相まっていく風味が絶妙だ。
これに「尾崎牛のコロッケ」、「尾崎牛の鉄板焼き」と続く。サーロインとウデを2切れずつ難無く完食できるのは、「脂が軽い」ためだろう。
〆の食事は、2種類の白米を食べ比べ、好きな方を選んで「卵かけごはん」を作ってもらう仕組み。卵かけごはんといっても、温泉玉子の上にトリュフを削ってかける贅沢なものだ。
至れり尽くせりの全12品で客人を喜ばせるこの店こそ、「希少」である。
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