top of page

御料理 壽修(西麻布)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年5月15日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月23日

東京都港区西麻布2-16-1   ☎︎03-6427-5167

営業時間18:00〜24:00   定休日:日曜、祝日 

予算:おまかせコース¥12,960(サービス料10%別) http://www.jyusyuu.tokyo

*2016年「週刊新潮」15号掲載



佐賀出身の料理人が

東京で開花させた「関西割烹」


 殀寿貳わず、身を脩めて以て之を俟つは、命を立つる所以なり――。

 東京・西麻布の割烹料理店「壽修(じゅしゅう)」は、『孟子』のこの一節から店名を引いている。その意味は、人生の短長にかかわらず、身を尽くして天命を全うすることが肝要、というもの。

「自分への戒めを込めて、この名前を付けました」

 こう語る店主の先崎真朗氏(40)の精進が垣間見えるかのようだ。

「最初は西洋料理を目指していたのですが、調理学校在学中に訪れた大阪・北新地の割烹『斗々屋』で衝撃を受けたんです。漆塗りの折敷の中に盛られた料理の景色が美しく、イチジクと牛肉の食材の取り合わせが斬新だった。それで、卒業後に9年間修業させてもらったんです」

 上京後、都内の日本料理店を経て2010年に独立すると、2年後にミシュラン2ツ星を獲得。一躍、有名料理人の仲間入りを果たしたのだった。

「東京よりも“遊び心”がある関西割烹の基礎を受け継ぎながらも、自己流の料理を出すのが、私のスタイル。特に、和食のメインである煮物椀に力を入れています」

 その力作は、「聖護院大根の蕗味噌」「サヨリの昆布締〆と赤貝、京菜、うるいの土佐酢和え」に続く3品目登場した。

 大きな椀の蓋をとると、出汁の湯気と共に吸口の木の芽が香る。そこに筍、甘鯛、若布がたっぷりと盛られている。

 長さ7cm程もあろうかと思われる筍を噛むと、ポキリと小気味よく折れ、トウモロコシのような甘味が広がった。出汁には大きな甘鯛の旨味が染み、これをまとった若布はとろけるように柔らかい。

「食材をちょこちょこ出すのが好きではないんです。使うなら、しっかりと使いたい。特に筍は、噛んだ時に甘味を感じるためには、大きい方がいい。今日は前の晩に掘られた鹿児島県産のものを使いましたが、来月あたりから京都で朝掘ったものを仕入れる予定です」

 食材をダイナミックに使う先崎氏のスタイルは、4品目のお造り、5品目のフグの白子にも通じている。

 厚めに切られた長崎県産メジマグロの赤身は、あっさりした旨みと爽やかな酸味が心地よい。サッと炙った皮は、噛むと脂と共に旨みが染み出る。

 一方、下関産のフグの白子は一見、焼き餅のよう。6㌢程の白子に一味醤油を塗って焼いているため、みたらし団子を思わせる香りが漂う。関西割烹らしい遊び心溢れる演出だ。

 終盤は、フグよりも脂が乗ってプリッとしている「佐賀県唐津産クエの立田揚げ」、炭火で焼いた「佐賀牛のイチボ」と続き、〆は土鍋で炊いた佐賀県産「ユメシズク」の白飯だ。

「実は、佐賀は私の故郷。それで、鹿児島や長崎を含む九州の食材を好んで使っているんですよ」

 佐賀に生まれ、関西で育ち、東京で開花した先崎氏の天命、『寿修』にあり――。


©MEGUMI KOMATSU

Commentaires


SUBSCRIBE VIA EMAIL

© 2023 by Salt & Pepper. Proudly created with Wix.com

bottom of page