新ばし笹田(新橋)
- 小松めぐみ
- 2018年4月7日
- 読了時間: 3分
更新日:2018年8月23日
東京都港区西新橋1-23-7 プレシャスコート虎の門1F ☎03-3507-5501
営業時間18:00~21:00LO 定休日:日曜、祝日 予算:¥12,960〜
*2015年「週刊新潮」24号掲載

「川違い」で食べ比べる「天然鮎」
鮎漁解禁にあわせて、薀蓄をひとつ。一口に「鮎」と言っても味は様々。育った川の水や苔の香りによって、味が微妙に異なってくる。「香魚」と呼ばれる所以である。
その違いを確かめられるのが、東京・西新橋の「新ばし笹田」。予約時に希望を伝えると、天然鮎が1本含まれる1万2960円の「おまかせコース」に、1本につき2160円の追加料金で、産地別の天然鮎を食べ比べられるという(6〜8月まで)。
ご主人の笹田秀信氏(43)によれば、
「2年前、鮎が好きなお客様に“2本食べたい”と言われ、産地の違う鮎をお出ししたところ、“違いが分かって面白い”とおっしゃって。それ以来、お客様の希望にあわせて、産地の違う鮎を2~3種仕入れています。台風などの突発的な事情で、1種しか入らない時もあるんですけどね」
扱っているのは、ご主人が気に入っている岐阜の長良川、島根の高津川、広島の太田川、熊本の川辺川の4種の鮎。どこも名産地である。今回は「川辺川」以外の3種が入荷しているというので、2本を追加してコースが始まった。
桧のカウンターに出された1品目は、「生雲丹の出汁ゼリーがけ」。甘味のある生雲丹の上に鯛と鱧の出汁ゼリーがかかり、なめらかな食感に食欲が刺激される。
2~3品目は日本料理の夏の王道で、旬の「穴子の棒寿司と枝豆」と、骨切りしたハモの表面を炙って冷水につけた「ハモの焼き霜」。
次は一転して珍しい「アイスランド産ナガスクジラの尾の身」のお造りで、
「尾びれの付け根にあたる『尾の身』は霜降り肉で、一番脂がのっている」
と、ご主人が言う通り、薄い身は柔らかく、繊細な脂が舌の上で溶ける。
5品目はご主人の定番「壬生菜と油揚げの出汁煮」だ。おばんざいのような何気ない料理だが、最初の一口は上に振った胡麻の風味が立ち、壬生菜と油揚げは実に上品。
続いて「お造りの盛り合わせ」「おこぜのお椀」を楽しむと、ご主人がカウンターに3種の鮎を並べて見せてくれた。
「ほかと比べて細見で体高のあるものが、太田川の鮎です。先にそれぞれの頭を召し上がってみてください。味の違いが分かりますよ」
言われた通り、鮎の頭を一つずつ食べていくと、どれも一様に香ばしいが、最も脂がのっていて旨味の濃いのが「高津川」。次に胸びれの辺りを一口ずつ食べ比べると、やはり「高津川」は旨味が濃い。一方、淡泊で瓜のような香りがあり、最も鮎らしい印象を受けるのが「太田川」。「長良川」は両者の中間的な味わいである。
ご主人曰く、
「今日は手に入りませんでしたが、川辺川の鮎も大きくて美味しいんですよ」
〆の土鍋ごはんと赤出汁を味わいながら、次は「川辺川」を、と胸に決めたのだった。

©MEGUMI KOMATSU
Comments