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新三浦 築地本店(築地)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年3月25日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月25日

東京都中央区築地1-8-1 新三浦ビル ☎︎03-3541-0811

営業時間11:30~14:30(月~土・祝日)、ディナー17:00~22:00 (土曜・祝日は要予約)

定休日:日曜 予算:昼¥2,200(土曜はコース¥6,800〜)、夜¥7,800~

*2015年「週刊新潮」8号掲載


伝統「100年」

博多発祥の水炊き


 東京・築地は市場の街だが、かつては艶やかな芸姑の姿がそこかしこで見られたという。

「私どもが店を出した昭和38年以前から、この辺りは料理店が立ち並ぶ東京の奥座敷だったんですよ。新橋の芸妓さんが出入りされる店もたくさんありました」

 水炊きの名店「新三浦築地本店」の白井善三郎社長(82)は、そう言って来し方に思いを馳せる。

「祖父が明治43年に博多で創業した際、魚の鍋料理などにヒントを得て考案したのが、当店の水炊きです。以来、看板料理として進化しながら、100年以上にわたって受け継がれてきたんですよ」

 文豪・川端康成や、今東光も通った博多本店は兄が継ぎ、善三郎氏は大学進学を機に上京した後、この店を開業した。

「中学生の頃から、3代目の兄のもとで家業を手伝ううちに、いつか東京にも新三浦を出店し、本場の水炊きを味わっていただきたいと思うようになりました。美味しいものを出せば、お客さんは来てくれると、肌で感じていたからでしょう。この店は当初、木造一軒家だったのですが、ビルにリニューアルしてから早26年が経ちます」

 店内には全10部屋の個室があり、いずれも内装の趣が異なる。取材日に案内されたのは

「『商談が上手くいく』と言って、好まれるお客さんもいる」 

 という2階の一室。赤い絨毯に黒いテーブルが置かれた、大胆な色使いが印象的だ。壁に目をやると、なるほど、富士山の絵が掛っている。

 思わぬ縁起物に上機嫌になりながら、名物の「水だきコース」(9800円)を注文した。

 鶏皮の煮こごりなどの7種を盛り合せた「前菜」、軟骨の食感が楽しい「鶏つくねタレ焼」、ジューシーな骨付きの「鶏唐揚」を満喫すると、いよいよ「水炊き」の番である。

中居さんが、赤い木蓋をした鉄鍋を運んできた。テーブルの端のコンロで温めること約3分、まずは白濁スープを湯呑みで一口。上品なコクとまろやかさに、身も心も温まる。

 続いて、小鉢に取り分けられた「つくね」はふんわりとやわらかく、「骨付きモモ肉」は驚くほど身離れがよい。自家製ポン酢で味わえば、旨味が引き立つ。

「美味しい鶏の決め手になるのは新鮮さで、身離れの良さはその証です。ウチでは信頼する築地の業者から、その日の朝に締めた若鶏を仕入れています。そのガラや手羽、端肉と水を8〜10時間かけて煮込むうちに、自然とスープが白濁する。水炊きとポン酢の製法は、博多本店と同じです」

 栄養満点のスープをたっぷり吸った〆の雑炊を味わえば、体の芯から活力が湧いてくる。

「私は今年で82歳になりますが、よく食べているこの水炊きが、健康の秘訣かもしれませんね」

 白井社長の微笑みは、東京出店を夢見た少年時代を思わせるのだった。




©MEGUMI KOMATSU

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