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日本料理 銀座 いしづか(銀座)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年6月7日
  • 読了時間: 3分

東京都中央区銀座1-13-8 ハビウル銀座5F    ☎︎03-6228-6908

営業時間11:30〜13:30LO、17:30〜21:00LO   定休日:日曜、祝日 

予算:昼¥2,700〜、夜¥12,960〜 ※鱧コースは前日までに要予約

http://ishizuka-1138.com    *2016年「週刊新潮」31号掲載



常連のリクエストで生まれた

瀬戸内直送の「鱧」コース


「梅雨の雨を飲んで美味しくなる」といわれる鱧は、関西では夏の味覚としてお馴染みだが、関東で扱う店は小数派。「銀座いしづか」は、鱧コース(2万1600円)を出す希少な一軒だ。

「鱧を使った料理は通常のコースにも1品以上組み込みますが、鱧コースは全9品中の最低4品が鱧料理です。もともと食通のお客様のリクエストで始めたのですが、『鱧を食べたことがないのでコースで味わいたい』というお客様も多く、ご好評をいただいています」

 清々しい白木のカウンターで腕を振るう店主の石塚規氏(40)は、「紀尾井町福田家」や「分とく山」などの名店で活躍した、この道20年のベテラン。期待に胸を膨らませつつ先付の「もろこし豆腐紫雲丹添え」を口にすると、同時に目の前でザクザクと鱧の骨が切られ始める。鱧には長くて硬い小骨が多いため、この「骨切り」の工程が必須だが、技の習得には長い年月がかかるもの。事もなげに骨切りをする石塚氏も、マスターするのに10年かかったとか。

「腹開きにした鱧は、骨に対して垂直に切ることと、皮一枚を残して深く切ることが肝心です。鱧の小骨は斜めの角度についているので、まず骨の向きを把握する必要あるんですよ。そして、3㌢の幅に20本以上の切れ目を入れます」

 淡々と超絶技巧が施された鱧は、まずは炭で炙ったものと、湯引きしたものが登場する。炙った方は表面にうっすらとにじんだ脂が味わい豊かで、湯引きした方はプリッとした食感と淡白な旨味がたまらない。

 続く2品目は前菜盛り合わせで、3品目のお椀は「葛打ち鱧の牡丹仕立て秋田の順才添え」。熱々の吸地の中で大輪の牡丹の花のように開いた鱧の身には、極上の旨みが溢れている。

「鱧は瀬戸内海で今朝捕れたものを漁師さんから直送してもらっています。瀬戸内海の鱧は豊富な餌に恵まれるため脂のノリがよく、速い海流によって身が締まっていますが、当店で使う鱧は漁師さんが捕って即座に船上で締めたものなので、状態も抜群。安定して入手するためには、漁師さんに『あいつのために送ってやろう』と思ってもらわないとダメなので、年に何回か産地に行っています」

 そんな逸話を聞けば、感激もひとしお。5品目からは「7種のお造りの盛り合わせ」「甘鯛の焼きびたし」「蒸しアワビ、翡翠ナス、冬瓜の胡麻あん」などが続くため、“鱧づくし”とはならないが、フィナーレを飾るのはやはり鱧料理だ。

 8品目の「冬瓜と雲丹の月花揚げ」は雲丹を巻いた鱧の天ぷらに冬瓜の鬼おろしを添えたもので、「月花揚げ」という名前の由来は断面が花のように見えることから。9品目は、タレ焼きにした鱧の押し寿司である。

 鱧コースは10月初旬まで続くが、内容はその時々で変わり、例えば9月はお椀が土瓶蒸しとなる。

「京阪地方では6月から祇園祭りまでが旬とされていますが、私は8月以降が最も美味しいと思っています」

 旬はまさにこれからだ。


©MEGUMI KOMATSU

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