日本料理「雲海」(赤坂)
- 小松めぐみ
- 2018年10月12日
- 読了時間: 3分
更新日:2018年10月16日
東京都港区赤坂1-12-33 ANAインターコンチネンタルホテル東京3F
☎︎03-3505-1111
営業時間:11:30~14:30 LO、17:00~21:30LO(土日祝16:30〜)
無休 予算:昼¥3,500〜、¥6,500〜(税サ別)
https://anaintercontinental-tokyo.jp/dine/unkai-restaurant/

日本庭園を眺めつつ味わう
秋の名物、松茸会席
「ANAインターコンチネンタルホテル東京」3階の「雲海」は、美しい日本庭園を愛でつつ、伝統的な会席料理や特選和牛のコースを楽しめる日本料理店。毎年9月から10月中旬頃には旬の松茸を生かした会席料理が提供され、常連客を魅了している。
松茸は、傘が膨らみ始めた「つぼみ」が関東では高級とされているが、
「松茸の香りは傘にあります。ですから傘が半分開いた『半開き』や、さらに開いた『開き』もいいものです。京都では『開き』を好む人も多いようですね」
と、吉安健料理長(51)。
「雲海」の秋の会席コースでは、「つぼみ」「半開き」「開き」それぞれの状態に合わせた松茸料理を出しているとか。とはいえ、松茸は人口栽培できないだけに、「つぼみ」と「半開き」しか入荷しない日もある。確実に状態の違いを楽しみたい場合は3日前までのリクエストが必須だ。
人気の「紫雲会席」(1万7000円、以下税サ別)の松茸料理は9品中の3品で、先付と2品目、食事に松茸が使われる趣向。先付として近江牛や酢橘などと合わせた松茸の「つぼみ」は、芳香と歯応えが爽やかだ。
「松茸は焼いたり炒ったりすると香りが出ます。ただ良い食材にはできるだけ手を加えないのが私のモットーですので、最低限の火を入れて香りを引き出しました。合わせた近江牛は当店の人気食材のひとつです」
「半開き」と名残の鱧を取り合わせた2品目の土瓶蒸しは、松茸と出汁の香りが相まった湯気もごちそう。鼻腔を満たす香りと出汁の旨味を満喫すれば、早くも至福を感じる。
「土瓶蒸しは香りを楽しむ料理ですので、本日は『半開き』を使いました。『つぼみ』を使うと、もう少し上品になります」
食事の「松茸釜炊き御飯」には、「半開き」や「開き」を使って香りを生かす方針。コース全体には約200㌘の松茸が登場するという。さらに上には松茸づくしの「雲海松茸会席」(2万5000円)もあるが、
「秋は松茸のほかにも美味しいものが多い季節。色々な旬の味覚をお楽しみいただけたら嬉しいです」
と料理長。「紫雲会席」の3〜7品目には、言葉通り、季節感溢れるお造り、八寸、煮物、焼物、進肴が続き、いずれも端正な趣だ。たとえば旬の鰻の炭火焼と風呂吹き蕪の煮物は、大根の包丁目の美しさに目を見張る一品だ。吉安氏の前職は赤坂の老舗料亭「鶴よし」料理長だったこともあり、秋には大根を菊の花に見立てて飾り切りするというような日本料理の伝統が、「雲海」にも引き継がれているのだ。
進肴の丸鍋の主役は、旬のすっぽんを閉じ込めた玉子豆腐。献立に記された“すっぽん十五夜豆腐”のネーミングに気づけば、風流なお月見気分。月とすっぽんの言葉遊びにも心が和む。
©MEGUMI KOMATSU


*次回は10月18日発売「週刊新潮」40号にて、「ファロ」の記事をお届けします。
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