日本橋 逢坂(日本橋)
- 小松めぐみ
- 2018年5月17日
- 読了時間: 2分
更新日:2018年8月25日
東京都中央区日本橋6-16グリーンビル4F ☎︎03-5695-8126
営業時間17:30〜21:00 定休日:日曜、祝日 コース¥7,000〜 https://www.ohsaka.net
*2016年「週刊新潮」11号掲載

蕗の薹のほろ苦さをアクセントにした先付は、いかにも日本の春の味わいだ。しかし、どこかモダンに感じられるのは、蕗の薹が溶け込んだ出汁のジュレのためだろう。和の素材と西洋の調理法が違和感なく調和し、その下に盛られたウニとアスパラガスを引き立てている。
「今は、和食とフレンチの垣根が低くなってきている時代です。和食の料理人がジュレなどの調理法を使うこともあれば、フレンチのシェフが味噌や醤油を使うこともある。私がやっているのは、今以上に西洋の感覚が混じり込んでくるであろう、“これからの和食”」
そう語るのは、東京「日本橋 逢坂」の店主・大坂和美氏(44)。有名日本料理店での修業を経て、2007年に独立した彼の料理には、若き日に専門学校で習得したフランス料理の知識が活かされている。
その一例が、冒頭の先付だ。7000円と1万円のコース2種のうち、後者の1品目に登場した。前半は「鮑の蒸し物」や「お造り」などのオーソドックスな日本料理が続くが、中盤からモダンな様相が濃くなっていく。
4品目の汁物は、黒い漆椀に白い泡がこんもり盛られた、斬新なスタイル。蛤の煮汁と豆乳を泡立てたもので、その下には白菜で蛤を包んだ“ロール白菜”が潜んでいる。
次の5品目は、まるでフランス料理のような盛り付け。白い皿に黄緑色のソースが敷かれ、その中央に鮭が乗っているのだ。
「キングサーモンに脂がのっているので、酸味のあるキウイのソースを合わせてみました。こういったメニューは、休日に食べ歩いているフレンチやイタリアンの料理から、ヒントを貰っているんですよ」
キウイの甘酸っぱさが鮭の旨みに合うなんて、意外な発見である。
後半は「蛍烏賊と芽キャベツの天ぷら」「菜の花とキヌアのお浸し」と続き、通年の看板料理「すき焼き」が登場する。
大坂氏のこだわりは、甘さ控え目の割下で煮たA5ランクの和牛を、ムース状のふわふわの「泡卵」につけて食べさせること。
「生卵が苦手な方も多いので、エスプーマという調理器具を使って溶き卵にガスを封入し、泡状にしているんです。和牛は脂が濃厚ですが、この泡を付けると、さっぱり食べられる」
いつもならワインを頼むところだが、大坂氏のおすすめは日本酒。それも、若い世代が造る、小規模な蔵の銘柄だ。
「洋食を食べて育った若い造り手は『酸』の出し方が上手く、肉料理によく合うんですよ」
約20種の中から、20代の杜氏が造っているという神奈川の「亮」を選び、すっかりほろ酔い。
〆の鯛茶漬けと甘味をかみしめながら、進化する和食と時代の変化をしみじみと思った。

©MEGUMI KOMATSU
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